小澤征悦”賢太”の言い分も分かるけど…朝山家のゴタゴタに考えさせられたワケ。『こんばんは、朝山家です。』第4話考察&感想【ネタバレ】

text by あまのさき

中村アン&小澤征悦がW主演を務めるドラマ『こんばんは、朝山家です。』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が放送中だ。本作は、“キレる妻”と“残念な夫”という衝突不可避の夫婦、愛しくも奇妙な家族の物語。今回は、第4話のレビューをお届けする。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 感想 レビュー】

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「朝山家がモデルの映画」に、子どもたちが猛反発

『こんばんは、朝山家です。』第4話 ⒸABCテレビ
『こんばんは、朝山家です。』第4話 ⒸABCテレビ

 賢太(小澤征悦)が初監督を務める映画のクランクインを間近に控えた朝山家。なんと撮影は家で行うという。経費削減にもなるし、朝山家がモデルである以上、リアリティは出る。出る、けれども。

 第5話「やめたいをやめさせたい」では、そんなタイミングの朝山家のバタバタが描かれた。

 晴太(嶋田哲太)は修学旅行に行くのをやめたい。班を決めるのに嫌なことがあったとかで、勝手に学校から帰ってきてしまう。わかる、修学旅行の班決めって、学生にとってかなり重要な問題だ。

 もともとクラスで浮いた存在である晴太がどんな思いをするのかも、なんとなく想像がつく。一事が万事この調子で、そんなにも嫌がるのなら、もう行かせなければいいのに、と傍目にはどうしても思ってしまう。

 朝子(中村アン)もそれでもいいと思っているようなのだが、賢太が行かせたいらしい。「行ってみたら楽しいかもよ」と言う。晴太の気持ちを聞き出し、寄り添うという感じではない。

野球チームをやめたい蝶子(渡邉心結)

『こんばんは、朝山家です。』第4話 ⒸABCテレビ
『こんばんは、朝山家です。』第4話 ⒸABCテレビ

 蝶子(渡邉心結)は野球を続けるのをやめたい。チームの中に話す人もおらず、とにかくイライラしてしまう。かろうじて練習には行っているかのように見えたが、実は2週続けてサボっていることが発覚した。やるな、蝶子。

 無理を続けて心身のバランスを崩すよりは、自分で逃げ道を作れるだけいいのでは、なんてのんきなことを思ってしまうのが、それにしたって嘘はよくなかった。

 もうやめさせたらいいと考える朝子に対し、賢太は「ここでやめるのはもったいない」「どこに行ったって嫌な奴はいる」と繰り返す。蝶子は蝶子で、自分の協調性のなさゆえに続けられないことを不安に感じている。だから悩んでいるのだが、その気持ちが賢太には伝わらない。

 ただ、一緒に練習をしている時は朱莉(池下リリコ)のことも結構悪く言っていた気がするのだが、ことここに至っては朱莉の家に入り浸っている。腹の内はどうあれ、必要や自分に利があれば、案外うまくやれるんじゃないか、とも思う。

どちらの言い分も分かる、けど…。

『こんばんは、朝山家です。』第4話 ⒸABCテレビ
『こんばんは、朝山家です。』第4話 ⒸABCテレビ

 晴太が修学旅行を嫌だと思う気持ちも、蝶子が自分の今後に不安を抱きつつ野球を続けたくないと思ってしまう気持ちも、朝子は理解を示している。それが不確定なことを不安に感じてしまう晴太の特性で、蝶子は自分でそう言っているから。

 修学旅行に行くことや嫌な人がいたとしてもスポーツを続けることが“普通”であるとする賢太の考えは、たしかに少し無理がある。朝子が賢太を、「自分の意見を押し付けている」と非難したくなる気持ちもわかる。

 でも同時に、本当にそう一蹴してしまっていいのだろうか? とも思う。

 賢太は「親として導きたい」とも言った。無理なことをやめたあとに、ではこの先どうするのか? と相談に乗ったりアドバイスをしたりするやり方が求められているのだろうとは思うが、賢太なりに、子どもたちのこれからのことを考えて、嫌なことにも向き合ってほしいと思っているんじゃないか。

 大前提としてやり方や言い方がまずいのはその通りなのだけれど、普通をふりかざしていると賢太を非難しながら、普通はもっと気持ちに寄り添うものだと言ってしまいたくはない。

 そんなことはテーマではないのかもしれないが、正しさが曖昧な世の中で物事を考える難しさを、わたしはこのドラマからつきつけられているようだ。

 たぶん、ヒントになるのは今回から登場した映画スタッフの小向佐知(工藤遥)が言った「私は平気って意識が、平気じゃない人を苦しめる」という言葉。まずはこの意識なのかな、と思っている。

 もともとは賢太に向けられたこの言葉から賢太が何かを感じるのか、はたまた感じないのか。少なくとも、観る者の心には留まっているはずだ。

 “若くてかわいい”小向をちょっと意識している賢太が軽くあしらわれる不憫をにわかに期待しつつ、次回まで普通や正しさについて自分なりに考えてみたいと思う。

【著者プロフィール:あまのさき】

アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

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