松たか子の「夢見る少女じゃいられない」が流石の上手さ…意外な美声に驚いたのは?『しあわせな結婚』第3話考察&感想【ネタバレ】
阿部サダヲ主演、松たか子共演のドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)が放送中だ。本作は、大石静が脚本を手掛ける、妻が抱える《大きな秘密》を知っても愛し続けることができるのか?と夫婦の愛を問うマリッジ・サスペンス。今回は、第3話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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鈴木家の強い絆のワケ
鈴木家が抱える大きな秘密が明かされた『しあわせな結婚』第3話。ネルラ(松たか子)は幸太郎(阿部サダヲ)にもう一人の弟・五守(名前の由来は宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』)の存在を打ち明ける。
ネルラの母はレオ(板垣李光人)のお産で亡くなった、ということは前話で明かされた通り。当時6歳で母親を恋しがる五守を元気づけるために、ネルラと叔父の考(岡部たかし)は海に連れ出した。しかし、少し目を離した隙に五守がいなくなり、そのまま遺体で発見される。
母親の死からわずか1年の出来事。それからというものの、ネルラ、孝、寛(段田安則)の3人は残されたレオを何が何でも守り抜くと決め、力を合わせて何不自由なく育ててきた。鈴木家の結びつきが強いのには、そういう背景があったというわけだ。
初めて心を通わせた寛(段田安則)と幸太郎(阿部サダヲ)
年に一度の恒例となっている京都・舞鶴への温泉旅行は、家族の絆を再認識するためのものでもあるのだろう。そこに幸太郎は誘われた。つまり、ようやく家族の一員として認められたということだ。
理由は幸太郎が元婚約者の殺害容疑をかけられたネルラを受け入れたことによる。そのことを知った寛は旅行中に幸太郎と2人きりになり、ネルラの思い出話を語り聞かせる。
これまでは厳格で気難しそうに見えていた寛。だが、ネルラが子供の頃にぽっちゃりしていたことを明かし、「それもまたかわいかった」と目を細める姿からネルラへの深い愛情が伝わってきた。
そんな大事な娘が母親や弟の死を乗り越え、ようやく前向きになったかと思いきや、あの事件が起きて完全に心を閉ざしてしまい、どれだけ心配したことだろう。
「だけど、君と出会って生き返りつつある」「どうかネルラを守り通してやってくれ」と幸太郎に頭を下げる寛がいつもより小さく見える。思わず涙ぐむ幸太郎と、先を越されて涙が引っ込んでしまった寛。まるで結婚前夜のようだ。
多幸感あふれるカラオケシーン
その後のカラオケのシーンも多幸感に溢れていた。松たか子が歌う「夢見る少女じゃいられない」は流石の上手さ。
阿部サダヲによる「春よ、来い」も味があって良かったが、孝がデンモク操作中に意図せず演奏停止を押してしまうというカラオケあるあるに思わず笑ってしまった。段田安則と「君だけに」をデュエットする岡部たかしの美声に驚いた人も多いのではないか。
板垣李光人の歌唱シーンはなし。少々残念ではあるが、いつもはドライなレオが意外にもノリノリでタンバリンを叩く姿が愛らしかった。
幸太郎への態度も相変わらず辛辣だが、少しずつ心を許し始めているようにも見える。最初はネルラを幸太郎に取られたみたいで拗ねていた部分もあるのかもしれない。
印象的だったのは、宿に着いたレオが「新婚旅行、何で行かなかったの?」「ネルラ、指輪ももらってないんだよ」と幸太郎に嫌味を言うシーン。
ギリギリ親子でもおかしくない年齢差がある2人だが、まるで親友のように仲が良く、それゆえにレオはネルラが心配なのだ。前回、幸太郎に蝶ネクタイを作ってあげたのも幸太郎のためというよりは、夫がかっこ悪いと姉さんが可哀想という思いからなのではないだろうか。
再び心を閉ざすネルラと離れてしまう幸太郎
そんなレオはネルラのために、有名写真家トニー・リーに2人のウエディングフォト撮影を依頼。結婚式を挙げないならせめて…という弟なりの思いやりだったが、それをきっかけにネルらは再び心を閉ざしてしまう。
激しく点滅するストロボの光で、ネルラの脳裏にフラッシュバックするのは事件当日の記憶元婚約者の布勢(玉置玲央)と揉み合っているうちに頭を打ち、気絶したネルラだが、途中でかすかに意識を取り戻していた。
その時、見たのは血を流して倒れている布勢と、その向こうを歩く誰かの足元。当時、事件現場にはネルラと布勢以外の第三者がいたのだ。
そのことをネルラから打ち明けられた幸太郎は詳しく話を聞こうとする。もしその第三者が布勢を殺したのならネルラの容疑は晴れる――そう期待して。
しかし、ネルラは「警察の尋問みたい」と怯え、幸太郎を拒絶。そこに追い打ちをかけるように、幸太郎が「依頼者に信用されてない弁護士ほど、惨めなものはないんだよ」と言ってしまったことでネルラは完全に心をシャットアウトしてしまった。失望に満ちたネルラの瞳に心が折れた幸太郎は家を飛び出す。
ネルラを守り通すという寛との約束を早々に放棄してしまった幸太郎。だが、それも無理ないように思う。真実を追求し、公益を守るために法律を運用する法律家としての矜持を幸太郎に問うておきながら、いざ幸太郎が職務を全うしようとすると壁を感じる。そんなネルラの一貫性がない言動に振り回され、幸太郎は疲れてしまったのだろう。
しかし、ネルラもまた幸せになりたいという願いと、そのために幸太郎に自分を曲げてほしくないという気持ちとの間で揺れているのだ。第3話は、ほのぼのとしたホームドラマの雰囲気から急転直下のシリアスなラストとなった。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
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