風間俊介の叫びにグッとくる…一際存在感を放ったシーンとは?『明日はもっと、いい日になる』第5話考察&感想【ネタバレ】

text by 古澤椋子

福原遥が主演を務める月9ドラマ『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)が放送開始した。本作は、児童相談所に出向となった刑事が、こどもたちとその親と向き合い、ともに成長していく姿を描いた完全オリジナルストーリーだ。今回は5話のレビューをお届けする。(文・古澤椋子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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死と向き合うことで自分の感情を見つめる

『明日はもっと、いい日になる』第5話©フジテレビ
『明日はもっと、いい日になる』第5話©フジテレビ

 父が置かれた責任と子の思いがすれ違う。『明日はもっと、いい日になる』第5話は、2組の親子から母と子とは違う父と子の関係性の複雑さと問題が描かれた。

 ある神社で放火事件が起きる。母を亡くした糸川蓮(正垣湊都)は、祖父・茂(螢雪次朗)と共に暮らし、父・吾郎(平山祐介)は単身赴任。茂は蓮に「どうしたい?」と聞く。

 蓮の意思を尊重しているように聞こえる言葉だが、まだ保護されるべき13歳に対して、適切な対応なのかというと疑問が残る。茂は、娘である蓮の母・恵(安藤聖)を亡くし、蓮に対してどう接してよいのかわからなかったのだ。抗がん剤治療をやめて旅立った恵に対して、茂も蓮も悲しみをうまく飲み込めていないのだろう。

 茂は、恵から蓮の面倒を見ることを託されていた。この恵の行動は、茂にとっては恵から吾郎への諦めの証として見えていたようで、茂から吾郎へのあたりは冷たい。娘を亡くした茂は、蓮と同じくらい自分の悲しみを向ける場所がわからないのかもしれない。

 一方、蓮の父である吾郎は、恵からある思いを託されていた。恵から自分の治療にお金を使うのではなく、蓮のためにお金を使ってほしいと頼まれていたのだ。吾郎は反対するも恵の強固な思いは覆ることなく、恵は抗がん剤治療をやめて旅立ってしまった。そして、吾郎も妻を亡くした悲しみを誰かと共有することなく単身赴任をして、ある意味現実逃避をしていたのだ。

 蓮の放火未遂をしたり、施設で暴れたりという行動は、父に構ってほしいという気持ちの表れだった。そしてその裏側には一緒に母の死に向き合いたい、悲しみと寂しさを共有したいという思いがあった。

 亡くなった人が大切な人であればあるほど、悲しみを口にしたら、負の感情に飲み込まれてしまうと恐れる人は多いだろう。茂も吾郎も恵が大切だからこそ、恵の死をタブー視してしまっていた。

 しかし、故人を悼むことは故人との日常を思い出すことにつながる。そして口に出して悲しむことは、自分で自分の感情を受容することにつながるのだ。

負目を感じた者たちの悲痛な叫び

『明日はもっと、いい日になる』第5話©フジテレビ
『明日はもっと、いい日になる』第5話©フジテレビ

 今回の蓮の行動は、同じ悲しみを味わったはずの茂や吾郎と、恵について話す機会を持てなかったことが原因だった。恵が残した3人が全員男であることを踏まえると、父だから仕事に逃げることができてしまう、男だからうまく悲しみを口にできない、そんな男性が置かれた責任や立場による悲劇なのかもしれないと感じた。

 そんな不器用な糸川親子に向き合った蜂村(風間俊介)もまた、息子・功太(三浦綺羅)との関わり方に悩む父だ。児童相談所の業務の特性上、家族を後回しにせざるを得 なかった蜂村。離婚後の面会日も延期になってしまうことが多かった。功太は功太で、そんな父であっても懐いている様子だ。蜂村に自分を見て欲しいという思いが透けて見える。

 一方で、蜂村は離婚前の自分の行動が引け目となり、真正面から功太に向き合うことを避けていたように見える。元妻・沙織(笛木優子)から離婚を言い渡されたときに「これでもう家庭か仕事か悩まないで済む」という本音が浮かんでしまった罪悪感もあるのだろう。

 翼(福原遥)が言うように、仕事として子どもたちに向き合うことも、功太と向き合うことも蜂村にとって大切なことだ。しかし、時間は有限で、どちらかを選べば、どちらかは後回しになってしまう家庭を後回しにせざるを得ない自分と向き合いたくないから、功太と深く話し合うことを避けていたのだろう。

 蜂村にとって糸川家と向き合うことは、自分が失った家族と過去を直視することだった。悩みながら出たのが、蜂村から蓮への叫びだったのだろう。

 母が抗がん剤治療をやめたのは自分のせいだと泣き叫ぶ蓮に対して蜂村が声を荒げるシーンは、児童福祉司というよりも一人の親として恵の思いを代弁しているように聞こえた。

 負い目からくる不安そうな表情から一転、力強く伝えようとする存在感を放つ風間俊介の芝居は流石の一言で。風間だからこそ、厳しくなりすぎない愛のある叫びとなっていた。

仕事と家庭の両立の難しさ

『明日はもっと、いい日になる』第5話©フジテレビ
『明日はもっと、いい日になる』第5話©フジテレビ

 蜂村の仕事への情熱を浴びた功太は、最終的に蜂村の仕事に理解を示すと。これは言い換えれば、功太が仕事に関してはある程度は我慢するということだ。

 蜂村が「ごめんなあ」と2度も言ったのは、功太の温情を受け止めてのことだろう。蜂村と功太が納得しているのはわかるが、すべてのケースに成り立つものなのだろうか。今回も功太が蜂村の職場に来ていいなければ、2人はすれ違ったままだ。

 物語の最後に蔵田(林遣都)が言ったように、本来は仕事と家庭の両立において、家庭側のみが犠牲になるべきでないはずだ。家庭がないがしろになっている状況を企業側も是正する努力が必要になる。

 第3話でも激務のために、育児を母に任せざるを得ない父が登場したが、さらに仕事と家庭の両立の問題を際立たせるために、父と子の関係性をメインとする回を描いたのだろう。

【著者プロフィール:古澤椋子】

ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。

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【了】

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