中村倫也の演技が凄みを増したワケ…“陣内”の復讐のカウントダウン始まる。ドラマ『DOPE』第6話考察＆感想【ネタバレ】

2025/08/10

text by まっつ

髙橋海人と中村倫也がW主演のドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』（TBS系）が放送中だ。正反対バディが新型ドラッグ【DOPE】によって巻き起こる不可解な事件の解決に挑む、新時代の麻取アクション・エンターテインメント。今回は第6話のレビューをお届けする。（文・まっつ）【あらすじキャスト解説考察評価レビュー】

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陣内（中村倫也）が暴走したワケ

　陣内（中村倫也）が止まらない…。あまりにも切なさを伴う“暴走”だが、誰にそれを咎める権利があろうか。ついに彼は愛する妻の敵討ちを果たそうとしている。

　金曜ドラマ『DOPE　麻薬取締部特捜課』第6話では、陣内の単独行動で幕を開ける。才木（髙橋海人）とともに取り調べに立ち会う予定だったが、ジウ（井浦新）からの連絡を受けると「関東仁龍会」の頭（阿部亮平）の元へ。一人でカチコミに行き、異能力を使ってあっという間に制圧する。

　圧倒的な武力でやり込めるのは仕事のときと変わらないが、いつものように飄々とするような余裕は見えない。妻である香織（入山法子）殺害の真相に近づいている焦りが見て取れ、陣内だけど陣内じゃないと悲しみが押し寄せる。

　その違和感を抱えているのは才木も同じ。特捜課の仲間に陣内が姿を見せなかったことを話しても、麻雀じゃないとかわされる。徐々に陣内を理解し始めていた才木はどこか納得していないような表情を見せ、言葉にはしなくとも「そんなはずはない」という気持ちを雄弁に示す。だが実際のところ、妻殺害の復讐を果たそうとする陣内は今までの彼とは全く違うと言っていい。

香織（入山法子）を殺した犯人の正体は？

　意識が回復したニコラスの証言により、新宿中央署の本郷壮一（佐野和真）がDOPEを横流しする悪事に関わっていたことが明らかに。“ドーパー”となった本郷を4人がかりでなんとか確保するも、本郷が妻の殺害などを指示していたと知った陣内は、才木を気絶させて本郷とともに姿を消す。

　陣内の尋問はもはや拷問で、警察側の人間とは到底思えない（相手も警察なのだが）。真っ黒い瞳でナイフを持ち、少しずつ追い詰める陣内はもはや復讐鬼だ。

「たとえ俺が殺されるようなことがあろうと、香織の死に関わったヤツ全員復讐するってな」という言葉は全くの脅しでないだろう。完全に“闇堕ち”した陣内を中村は見事に表現し、ダークヒーローとしての魅力をどんどんと高めていってくれる。

　そんな陣内をある意味で平静へと引き戻したのが衝撃の事実だった。香織を殺した本当の犯人は本郷と一緒に五億円を奪った捜査一課の巡査部長・戸倉俊仁（小池徹平）だと語られる。その事実を明かされた陣内は同期の凶行に絶句。言葉を発さず、目の動きだけで驚きを表現し、視聴者にその辛さをトレースさせる。

　ドラマを見ている我々からすると、戸倉のどこか怪しい雰囲気は感じ取っていたが、それでも実際に事実を知り陣内の表情を見ていると嘆息せざるを得ない。

異能力発現…才木（髙橋海人）はどう出る？

　かたや才木は異なる方法で陣内に迫っていた。過去が見える“サイコメトリー”と呼ばれる異能力を発現し、陣内が持っていたジッポライターから香織殺害の悲劇を知る。浮かべた涙が意味するのは、自分の理想論と正義では陣内を深いところから救うことができないとわかってしまったからだろうか。

　そして、第6話のラストは陣内が親友・戸倉と対峙する。「本郷から全部聞いた。本当にお前が？」と問い詰める陣内に対し、戸倉が銃口を向けるという無言の“返答”。陣内にとっては最悪の答えが示される。諦めにも近い陣内の表情は復讐へのカウントダウンにも見えた。

　一方で、戸倉の左手薬指には指輪が光り、彼には彼の幸せを守るための正義があったのではとも願いたくなる。単純に私利私欲のために罪を犯し、友人の家族を奪ったのであれば、これ以上ない外道だが…。

　もっとも、銃ひとつで陣内を倒すことはできないと戸倉自身が誰よりわかっているはず。このまま行けば陣内の復讐は果たされてしまいそうだが、「未来予知」ですべてを悟った才木が走り出す。バディの罪を最後の最後で食い止めることができるのか。そして、それが2人にとっての最適解なのか。次週は最大の難問と向き合うこととなりそうだ。

【著者プロフィール：まっつ】

1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

【了】