當真あみ“めぐる”の「帰還」と「旅立ち」…『ちはやふる-めぐり-』前半戦クライマックスに号泣のワケ。第5話考察&感想【ネタバレ】

text by 苫とり子

當真あみが主演を務める7月期水曜ドラマ『ちはやふる-めぐり-』。本作は、競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を熱く描いた、映画シリーズから10年後、バトンを受け継いだ令和の高校生たちの青春を描くオリジナルストーリーだ。今回は、第5話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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めぐる(當真あみ)の“帰還”と“旅立ち”

『ちはやふる-めぐり-』第5話©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』第5話©日本テレビ

「おかえり」
「ただいま」

 親子の雪解けを象徴とする抱擁にとめどなく涙が溢れる。『ちはやふるーめぐりー』前半戦の最終回とも言える第5話では、めぐる(當真あみ)の“帰還”と“旅立ち”が描かれた。

 塾の合宿に行くと嘘をついて、かるた部の合宿に参加したことが両親にバレてしまっためぐる。家に連れ戻されためぐるはどうにか部活を続けさせてもらえるように掛け合うも、これから受験勉強に力を入れるべきタイミングということもあって、塔子(内田有紀)と進(要潤)を納得させることができなかった。

 めぐるは泣く泣く直近に行われる武蔵野大会を最後に退部することを決断。それでも、少しでも多く勝ち進んで長くかるたを続けるため、仲間たちとこれまで以上に練習に励むのだった。

めぐるが「変わってしまった」理由

『ちはやふる-めぐり-』第5話©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』第5話©日本テレビ

 畳で膝の部分が擦り切れたジャージ、夜中まで聞こえてくる払い練の音。あれだけ将来への投資にこだわっていためぐるが今、目の前のことだけに真剣に向き合う姿に塔子は驚く。

 だが、よく考えてみれば、子供は本来そういうものだ。それが将来に役立つかどうかなんて考えず、好奇心に突き動かされる。めぐるもかつては、そういう子供だった。

 では、なぜ変わってしまったかのかと言えば、一つは時代もある。

 長く続く不景気と、そこへ追い打ちをかけるように世界を襲った新型コロナウイルス。狼狽える大人たちを見て、子供たちは自ずと将来に備えることの重要性を学んだのだろう。その結果、子供たちの中で青春が生産性のない贅沢品になってしまった。

 ただ、それはあくまでも社会の変化で、めぐるが変わってしまったのにはもう一つの個人の理由がある。中学受験に失敗し、両親が自分にかけた時間とお金を水の泡にしてしまったこと、そしてそれを嘆く両親の会話を聞いてしまったことだ。そのことに塔子たちはようやく気づく。

かるたを取ることで自分を取り戻しためぐる

『ちはやふる-めぐり-』第5話©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』第5話©日本テレビ

 第5話を象徴とする<大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立>は、清少納言や紫式部と同時代を生きた女流作家・和泉式部の娘である小式部内侍の歌だ。

 あまりに歌の出来が良かったばかりに、母親による代作疑惑をかけられた小式部内侍が即興でこれを詠み、周りをあっと驚かせたという。

 自分の誇りを取り戻すために。そんな小式部内侍にめぐるの姿を重ね、塔子は「あの子も、自分を取り戻すためにかるたをとるのでしょうか」とこぼす。思うに青春とは、自分はどういう人間か、自分は何をしたいかといったアイデンティティを模索する作業だ。

 それよりも、今までのめぐるが重要視していたのは自分のせいで遅らせてしまった両親の人生計画を取り戻すこと。そんな、いわゆる自分迷子の状態に陥ってしまった彼女は、かるたの札を一枚一枚とるたびに自分を少しずつ取り戻していったのだろう。

凪(原菜乃華)との再会

『ちはやふる-めぐり-』第5話©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』第5話©日本テレビ

 塔子のように、自分の子供が迷子になったら親は心配するものだ。けれど、迷子になった先で子供は色んなものに出会って、新たな学びを得る。

 親が唯一できるのは、少し成長して、自分のもとに帰ってきた子供を「おかえり」と抱きしめることなのかもしれない。そしてまた、新たな旅に出る子供を「いってらっしゃい」と見送るのが、親の愛なのだろう。

 競技かるた界における東京御三家の一つ、アドレ女学院に一歩力及ばず敗北した梅園。試合後、塔子と進はめぐるを抱きしめ、「この子の気が済むまで、かるたを教えてやってください」と奏(上白石萌音)に託した。

 再び仲間たちとともに青春の旅に出ためぐるを待ち受けるのは、瑞沢という大きな壁。そのホープである凪(原菜乃華)とめぐるの再会が新章の始まりを告げていた。

【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

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