先読み不可能の展開…松たか子”ネルラ”の意味深行動に視聴者困惑のワケ。『しあわせな結婚』第4話考察&感想【ネタバレ】
阿部サダヲ主演、松たか子共演のドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)が放送中だ。本作は、大石静が脚本を手掛ける、妻が抱える《大きな秘密》を知っても愛し続けることができるのか?と夫婦の愛を問うマリッジ・サスペンス。今回は、第4話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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激しく葛藤する幸太郎(阿部サダヲ)
こんなにも先の見えないドラマがあっただろうか。ネルラ(松たか子)の元婚約者・布勢(玉置玲央)殺しの新たな真犯人が浮上した『しあわせな結婚』第4話で、物語は思ってもみない方向へ転がっていく。
15年前、布勢が転落死した現場にもう一人誰かがいたことを思い出したネルラ。そのことで彼女と口論になった幸太郎(阿部サダヲ)は家を飛び出し、独身時代に住んでいたマンションに戻る。後日、幸太郎の事務所を訪れたネルラは「これ以上あなたに迷惑はかけられない」と言って、別れを切り出すのだ。
そんなある意味潔いネルラに対して幸太郎は激しく葛藤していた。早くに天涯孤独となり、ネルラと出会うまで誰かと深く付き合うこともなく、ずっと一人で生きてきた幸太郎。
お金に余裕があるのはもちろん生活能力もあって、正直言えば結婚する必要は全くない。加えて根っからのひとり好き。広々としたマンションで悠々自適な一人暮らしを再開させた幸太郎は生き生きとして見えた。
「もう怯えることはやめた」
ネルラ(松たか子)の真意とは?
それでも離婚には踏み切れない幸太郎は、同じく妻と離婚寸前の今泉(金田哲)にも「よく話し合ってみるんだね」とアドバイスする。以前は依頼人にすぐ離婚を勧めていた幸太郎の変化に臼井(小松和重)も驚いたようだ。それだけネルラとの出会いは幸太郎にとって人生観を変えるほどの衝撃だったということだろう。
この先どうすべきかを真剣に考える幸太郎の姿を見て、ネルラもまた自分の心と向き合い始める。
「私もまとめてみせる」と自分に言い聞かせるように呟き、スケッチブックに向かうネルラ。さらには、執拗に自分の周辺を嗅ぎ回る黒川(杉野遥亮)に「もう怯えることはやめた」と宣言するのだった。
黒川の張り込み車からネルラが出てくるのを目撃した幸太郎はその後を追いかけ、鈴木家のマンションへ。そして寝室に入ると、壁にはネルラがスケッチブックに描いた一枚の絵が飾られてあった。
その絵に、視聴者の多くは困惑したのではないだろうか。筆者はてっきり、15年前に事件現場で見た光景、もっと言えば犯人の顔が描いてあると思った。
しかし、そこに描かれていたのはネルラの自画像。全く意図が掴めないその絵は、先読み不可能なこのドラマを象徴しているかのようだ。
布勢夕人を殺したのは寛(段田安則)!?
時を同じくして、ネルラは寛(段田安則)に「布勢夕人を殺したのはお父さん?」と問いかける。あまりに衝撃的なその台詞に思わず言葉を失った。
真相は次回以降に持ち越される形となったが、現時点では寛が布勢を殺した犯人とは思えない。いや、思いたくないというのが正直な気持ちだ。
というのも、その直前に寛が人格者であることを強調するエピソードが描かれたばかりだからだ。ネルラと別居中にも、週に一度の恒例である鈴木家の食事会には参加していた幸太郎。
そんな中、幸太郎の元カノで弁護士のつばさ(小雪)がなぜか鈴木家を訪ねてきたかと思えば、夏目緑子という女性の夫が寛に宛てた手紙を幸太郎に託す。緑子は寛が家族に内緒で交際していた相手。
実は既婚者で、妻の不倫に気づいた夫が寛に慰謝料500万を要求してきたのだ。緑子が結婚していることを知らず、高価なプレゼントも贈っていた寛は意気消沈。
そのことで、緑子を詐欺罪で訴えることもできた。だが、寛は「私がイヤなのは彼女を傷つけること」「これ以上ストレスを与えたくない」と逆に緑子を気遣う。
前回は幸太郎を鈴木家恒例の旅行に連れ出し、ネルラを幸せにしてやってほしいと頭を下げた寛。布勢にも鈴木家が所有する倉庫をアトリエとして貸し出すなど、気に入った相手にはとことん愛情をかけるタイプなのだろう。
そんな寛が人を殺すなどあり得ない…と言いたくなる一方で、可愛さ余って憎さ百倍という言葉もある。可愛がっていた布勢が愛する娘を傷つけたとなれば、頭に血が上って手にかけることもさもありなん。もし真実だったとすれば、かなり切ない展開になる。
ネルラを巡る三角関係?
さらにこの第4話では、黒川がネルラに執着する理由も少しずつ明らかになってきた。事件が起きた15年前、交番勤務についたばかりの新人巡査だった黒川は警察車両に乗せられたネルラの顔から「この女が犯人だ」と確信したという。
つまり刑事の勘だったわけだが、まだほとんど経験がない巡査の勘など高が知れている。それを未だに信じているというのは現実的ではない。
また気になるのは、幸太郎に言った「奥さんはこの世のどこにもいないタイプだと思います。だから、あなた“も”結婚しちゃったんですよね」という台詞だ。つまりそれは、黒川もこの世のどこにもいないタイプであるネルラに魅力を感じているということではないだろうか。
何よりネルラ本人が、黒川からの好意に気づいている様子。「(私のこと)好きなの?だからいたぶりたいの?」というネルラの台詞はなかなかのパワーワードで、これぞ大石静脚本!と思わず唸った。
布勢転落死事件の真相、鈴木家が抱える秘密、ネルラをめぐる三角関係と要素がてんこ盛りで、ラストが全く予想できない。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。