中村倫也“陣内”の存在意義とは…アクション重視の見せ方が効果的に映ったワケ。ドラマ『DOPE』第8話考察＆感想【ネタバレ】

2025/08/25

髙橋海人と中村倫也がW主演のドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』（TBS系）が放送中だ。正反対バディが新型ドラッグ【DOPE】によって巻き起こる不可解な事件の解決に挑む、新時代の麻取アクション・エンターテインメント。今回は第8話のレビューをお届けする。（文・まっつ）【あらすじキャスト解説考察評価レビュー】
——————————

特捜課にとっての陣内（中村倫也）の存在

　陣内（中村倫也）は特捜課にとって「光」だった。

　最愛の妻・香織（入山法子）殺害の犯人を見つけるため、復讐を誓っていた陣内。本郷（佐野和真）への尋問、親友・戸倉（小池徹平）との対峙は彼の闇を浮き彫りにし、最終的には戸倉を殺害し拘置所から脱走したという情報も届く。

　だが、誰も陣内を見捨てたわけではなかった。それは特捜課の面々が陣内の光の部分に一度は照らされた経験があったからではないだろうか。

　綿貫（新木優子）は腕力という異能を隠して学生時代を過ごした。ようやく活かせると思いSATに入隊するも、現場での単独行為により対立。居場所を失っていた綿貫を拾ったのが特捜課だった。パチンコ屋に入り浸るなどこれまでの陣内の問題行動も目をつぶることができていたのは、「居場所は与えられるものじゃなく作るもの」という言葉に心の底から感謝していたからだろう。

　それは葛城（三浦誠己）や柴原（豊田裕大）にしたって同じだ。彼らは陣内に呆れながらも常に最大限のリスペクトを払い、だからこそここまで一緒に仕事をしてこられたのだ。陣内という犯罪者を出したことで特捜課が封鎖されても、気付けば皆が同じ場所に集合するのは自然な流れだった。

才木（高橋海人）の思い

　もっとも、誰より陣内を信じていたのは才木（高橋海人）だ。文字通り目の前で陣内の復讐を目撃していた才木は、彼の翻意を感じて無実を主張していた。早く陣内を見つけたいと燃え、走り出す才木はおそらくどの特捜課の人間よりも陣内のことを想っている。純粋な愛はここまでの6話で順調に“育まれ”、小さな言葉のやり取りでも見て取れた。そのため、まっすぐと走り出すような才木の熱も決して大袈裟とは感じないのだ。

　その一方で、強大な第2幕が始まろうとしている。それがジウ（井浦新）や泉（久間田琳加）が言うところのゲームであり、多くの命が失われる可能性があるという。ジウは凶悪犯たちを相手に、もはや理解も難しい異能力を披露して次々と殺害。ラスボスとみられる敵の底の見えない強さは恐ろしく、果たして特捜課は対抗できるのかと不安に思ってしまう。

　他方、異能力ハンターたちを相手に、綿貫との共闘で成長を見せた才木。未来予知は戦闘に向かない能力であることが懸念されてきたが、今後さらなる覚醒があるのか。家族にも危機が及ぶ中、異能力バトルからは目が離せない。

　さらに言えば、今週の戦いはより目を引いたと感じた視聴者も多いのではないだろうか。仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズを担当してきた杉原輝昭氏が演出を行ったことも一因と挙げられるだろう。戦隊シリーズに明るくはないが、よりアクションを重視した見せ方は、リアルに重きを置きがちな民放ドラマでは新鮮に映り単純に面白かった。現実離れしたジウの異能力使用のシーンも含め、本作品に新たな色を加えている。

ついに「DOPE」を作った張本人が現る

　終盤には物語の根幹に関わる重大な過去も明かされる。それが才木の父の存在であり、彼こそが謎多き「DOPE」を作った張本人だった。才木の父は科学者として新薬開発に挑み、安定した異能力のためにDOPEを開発した。しかし結局、治験者たちは制御不能に陥り、異能力に目覚める者もいた。

　悪党が悪事のために生み出したのではなく、善人が世界を平和にするために作ったもの。それこそがDOPEであり、肉親が作り出したと知った才木の胸中は推し量れない。それでも異能力を使い戦い続けるしかないのは明白だが、人間はそれほど強くないことも私たちはすでに目にしてしまっている……。

　そんな中で最後に姿を見せたのが陣内。悩みや葛藤が隠しきれない才木の前に現れ、発したのは「久しぶりだな」という言葉のみ。だが、その言葉からは害意は感じられない。才木とともに最後まで陣内を信じていこうと決意できるラストとなっていた。

【著者プロフィール：まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

【最初から読む】
ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』第8話考察レビュー

【了】