視聴者を飽きさせないテンポの良さと先の読めない展開
『3000万』第1話 ©NHK
トップバッターを飾るのは、本作のパイロット版を仕上げた弥重だ。弥重はこのドラマが商業デビュー作となるが、初回の放送ではその才能が光り輝いていた。
まず特筆すべきは、視聴者を飽きさせないテンポの良さと先の読めない展開。物語はコールセンターの派遣社員として働く妻・祐子(安達祐実)と元ミュージシャンの夫・義光(青木崇高)の夫婦が、ピアノの発表会を終えた一人息子・純一(味元耀大)を載せた車でバイクと衝突すれすれの事故を起こすところから始まる。
事故の相手は意識不明の重体だが、幸いにも夫婦に過失はなく一安心…と思いきや、純一が相手の所持していたカバンを家に持ち帰っていたことに気づく祐子。その中に入っていたのは、3000万の札束だった。
当然すぐ警察に届け出ようとする祐子と義光だったが、盗みを疑われたらと思うとなかなか言い出せない。時間が経つにつれ、どんどん返しづらくなってしまい、そのうち「バレなければこのまま自分たちのものにしていいのでは」と魔が差し始める。
しかし、警察の取り調べで相手の乗っていたバイクが強盗事件の逃走に使われたバイクと同じであることが判明。怖くなった祐子は義光とともに事故の現場にカバンを置いてこようとするが、そこで怪しい男2人に絡まれるのだった。
そこから夫婦が危機を脱し、3000万を自分たちのものにすると決意するところまでノンストップで進んでいく。
さらにはラストで事故の相手が意識を取り戻す描写もあり、普通なら2〜3話かけて描く展開を約50分に詰め込む大胆さに驚かされた。「次はこうくるだろう」という視聴者の予想を裏切る展開も多く、まったく先が読めない。