「もう書籍化決定でしょ」
白山高校の存在を知った時の衝撃
―――現場も見学されたそうですね。
「物見遊山感覚でお邪魔したんですけども、なんか背筋がピリッと伸びたというか…。松平健さんが選手を怒鳴るシーンを撮っていたんですけど、もう松平さんがずっと怒鳴り続けていたんですよ。
それを聞いているうちに、僕もいい加減な気持ちでいたのが、空気がピリッと引き締まったというか、そこに当てられた感じはします。松平健さんの、あの特徴のある声が響き渡っていたので、本当に現実なんだと感じて…。迫力がすごかったですね」
―――著書の話に移ります。白山高校が出場したのは、第100回記念大会で、出場校は56。そのうち6校が初出場だったんです。その中で、なぜは白山高校をピックアップしたのか、単に、無名の県立高校だったっていうのが理由だったんですか?
「そもそも僕は、恥ずかしながら、白山高校が甲子園に出るまで存在すら知らなかったんですよ。それで白山が甲子園決めた時に、どういう高校なんだろうって思って過去の戦績を調べたら、2年前までは、10年連続で三重県大会の初戦で負けていたことが分かって…その前年も3回戦で敗退。そしてこの年に優勝、甲子園だと。こんなこと、もう書籍化決定でしょみたいなことをツイートしたんですよ。
でもその時は、僕が書くなんて全く思ってなかったんです。でも、そのツイートがバズって、何百か、何千かリツイートされて…。そこから、週刊誌の編集者の人が、『白山高校、ちょっと面白そうだから行ってみない?』と言ってくれました。そして、甲子園大会直前の段階で、白山高校に1度、取材させてもらって、そこから縁ができて、取材する中で、書籍化に至りました」
―――菊地さんが行った時点で、もう町中、お祭り騒ぎの状態だったんですか?
「お祭り騒ぎから数日経っているので…。街中至るところに、『白山高校おめでとう』といった張り紙とかもあるんですが、そもそも過疎の町なので、人がいないんですよ(笑)。僕も、 商店街の人とかが白山高校フィーバーに浮かれているのかなといった気持ちでいたら、そもそも駅を降りて学校までの徒歩10分ぐらいの中で、人っ子ひとり、すれ違うこともありませんでした。
そして、高校に着いても、垂れ幕があるじゃないですか。その垂れ幕も、あの周辺は結構強風が吹くので、垂れ幕が飛ばないように縛り付けているんですよね、垂れ幕が、ガクンガクンとなって、すごい不格好になっていて。
これを見た瞬間にやっぱり面白いなというか、いかにもこの学校自体が快挙というものに不慣れだったことも分かりましたし、こんな格好悪い垂れ幕は初めて見たなと思って、そこからのめり込んでいったという感じです」