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「大変さよりもワクワク感の方が勝っていた」
取材する中でも最も印象的だった出来事とは

写真・武馬怜子
写真武馬怜子

―――そこから取材を始めて、監督さんとその周辺の方を遡って、話を聞いて…。

「そうですね。本当に取材はゼロからだったので大変だったです。過去を振り返っていただくという形だったんですが、僕自身、高校野球を取材して20年近くになりますけど、『今日は何を聞けるんだろう』みたいなワクワク感の方が勝っていましたね。

というのも、強豪校の取材では出てこないような話がいろんな選手からポンポン出てくるんですよね。ファーストの子が軟式用のミット使っていて、ボールがブンと抜けちゃうとか、主砲の子が近眼でほとんど見えていない状態で試合していたとか。どういうこと!?と…(笑)」

―――まるで『メジャーリーグ』のチャーリー・シーンですね。

「その子はキャッチャーのサインが見えないんで、もうストレートしか投げなかった。周りは、あいつはやる気がないと見なされていたんですけど、本当は近眼で見えにくかっただけだったという話で。でも、なぜかバットにボールが当たったねと聞いたんですが、なんとなくこの辺の色が違うところに振ったら当たったみたいなことを言って“正気なの?”みたいな感じの子がたくさんいました。

玉手箱のように、毎日いろんなビックリ箱が開くみたいな取材で、すごく楽しかったですねぇ」

―――そんな中でも最も印象的な出来事っていうのは。

「今話した、目が見えづらかったという、伊藤尚くんって、チームの1番の問題児だったんですけど。彼の取材の日にちが決まらなくて大変でした。他の子たちは、この日は空いているからできますよとまとめていただいて、それに沿って進めていたんですけど、伊藤くんだけ、自分が空いている日を出さなかったらしいんですよ。

後から聞くと、大人に支配されたくないみたいな反骨心があったみたいで。だから、伊藤くんだけこのままでは取材できない日が続いて、とうとう取材最終日に、ようやく伊藤くんを捕まえることができて、その時に腹を割っていろんな話をさせてもらえて…。

やっぱり伊藤くんの話を聞いてこれはもう本になるどころか、もう映像化されるんだろうなって思ったんです、その時点で。こんな面白い人がいたら、映像化されない方がおかしいよなとさえ思いました。当然、地上波の連ドラとは、全く想像していなかったですけど。伊藤くんの話はいろいろと強烈で、印象深かったですね」

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