「全ての高校球児にチャンスはあるんだよ」
本を通じて伝えたかったメッセージとは?
―――白山高校のキャッチフレーズになった「日本一の下剋上」というものは、地元の人のみならず、高校野球ファンに多くの感動を与えたわけですが、このテーマについて、どのようなメッセージを届けようとお考えでしょうか。
「僕自身も元々、高校まで野球をやって、高校球児として甲子園を目指してやってはいたんですけど、本当に遠く及ばなかったですよね。もう西東京大会ベスト32という“ザ・中途半端”な結果で、甲子園に行くにはあと4勝か5勝ぐらいしなきゃいけないぐらいの、果てしなく遠い道だなって、甲子園に対して思っていて、未だに、甲子園に行けなかったコンプレックスというか、行った人に対して、羨ましいなぁという思いがあったんです。
著書でも最後の方に書いたんですが、白山高校が甲子園に行けるってことは、どの学校でも甲子園に行けるってことですと、ある保護者の方が語ったのを聞いた瞬間に、本当にそうだよなと思いました。もちろん頑張って、ちょっと運が味方してくれれば、どの学校でも甲子園に行く可能性があるんだなって。とても夢やロマンがあることだなと。
100回大会を迎えたタイミングで白山高校が出たわけなんですけど、一方で、例えば、福島の聖光学院や、栃木の作新学院とか、10年連続出場みたいなチームがいっぱいあるわけですよね。高知だと明徳義塾もあります。要は甲子園出場校って、ある程度、固まっていて、いわゆる強豪私学といわれるような高校がほとんど独占しているっていう状況の中で、10年連続初戦敗退から2年で、白山高校が甲子園に出場したという出来事は、意義が深いことだなと思ったんです」
甲子園ではボロ負け(初戦の愛工大名電戦で0-10)でしたけれども、白山高校という高校に対して、誇りを持っている生徒がほとんどいなかった状況で、みんな、第1志望の学校落ちて、いわゆる、滑り止めというか底辺校ですよね。もうここしか行く宛がなかったっていう子たちが、ちょっと間違えたら、こうなっちゃうというところも、そのままお伝えしたいなと思いました。“全ての高校球児にチャンスはあるんだよ”と」
【後編に続く】
(取材・文:寺島武志)
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