「彼らは“リアル・ルーキーズ”ではない」『下剋上球児』著者・菊地高弘、インタビュー。TBSドラマの原案として話題【後編】
10月15日から放送がスタートした鈴木亮平主演の日曜劇場『下剋上球児』。今回は、同ドラマにインスピレーションを与えた同名書籍の著者・菊地高弘さんのインタビューをお届け。後編では白山高校を通して、高校野球、日本球界全体の今後についてたっぷり語っていただいた。(取材・文:寺島武志)
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【書籍紹介『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』】
2023年10月スタート TBS系ドラマ日曜劇場『下剋上球児』原案作品 主演:鈴木亮平
10年連続、県大会初戦敗退の弱小校。かつて県内で一番対戦したくない“荒れた高校”がまさかの甲子園!?「思い出と恐れ。こんだけの人が、君らを応援してくれたんだぞ」2018年夏の甲子園に初出場した三重県立白山高校。白山高校は、それなり野球エリート校とは対照的なチーム「リアル・ルーキーズ」のキャッチフレーズ…。
そんな白山高校がなぜ甲子園に出場できたのか。そこには、もののミラクルと信じられない物語が存在した。「菊地選手」渾身の一作。
なぜ白山高校は強くなったのか
東拓司監督の教育方針
―――ドラマでは東拓司監督にインスパイアされて生み出された役は鈴木亮平さんが演じることになっているんですが、監督の熱意以外で、チームの成長には何が影響したと思いますか?
「東先生とは取材で何度もお会いする中で感じたことですが、全国的には無名の監督さんだったのに、ちょっとブッ飛んでいると言いますか、大物の方を前にしても全く臆することなく話しかけますし。存在感が特殊というか、人を惹きつけるものがあると思いました。それがカリスマ性というものなのかは分かりませんが。東先生がいなかったら、いろんな人も巻き込めなかったでしょうし。
先ほど話した伊藤尚くんは、野球部を7回も8回も何回も辞めようとした生徒なので、それを東先生が何回も辞めるなと説得して残したので、結果的には、そういう東先生のずば抜けた情熱が歴史を動かしたのかなという気はしますね」
―――著書の中では、例えば、練習メニューなどは、一切、書かれてなくて、練習試合、対外試合を中心に追っています。東先生の方針って、試合の場数を踏んで上手くなろうっていうものだったんですか? もちろんグランド整備から石コロを取り除いて、手作りのフェンスを作ってというところから始まっているんですが、練習ではなく、もう実戦、実戦で鍛えていったという感じなんでしょうか。
「そうですね。まあ、場数を踏むというのはもちろん目的としてあったと思うんですけど、一番大きかったのは、あの選手たちを飽きさせないってことが重要だったと思うんです。
単調な練習になればなるほど、飽きてしまう子どもたちで、長い時間かけて、地道な練習、反復練習に取り組むという体験をしてこなかったので、そこを飽きさせないために実戦を増やしたのが大きい理由だったんじゃないかなと思いますね」
―――よくわかります。やはり野球って、練習より試合の方が楽しい。
「もちろん、そうですよね。その思いがより顕著に持っているのが白山の子たちだった。ならば、もう振り切ってしまおうということですね。普通に練習中、つまんないと帰っちゃったりする子たちでしたからね」