ホーム » 投稿 » インタビュー » 日本映画 » 「彼らは“リアル・ルーキーズ”ではない」『下剋上球児』著者・菊地高弘、インタビュー。TBSドラマの原案として話題【後編】 » Page 4

高校野球の今とこれから

写真・武馬怜子
写真武馬怜子

ーー高校野球に話を戻すと、高校野球も名物監督みたいな人がたくさんいらっしゃいます。でも、高校野球の監督の環境も変わっていくと思うんです。

働き方改革で、教員の過重労働が問題視されているじゃないですか。授業やって、テストの丸付けやって、部活やってって、もう午前様に近いような働き方をしているのが現状です。だから、教員も兼ねる監督の“熱意”が頼りみたいな部分には、やはり限界があると思うんです。

その時代の変化の中で、東監督のような熱血監督みたいな人をどう作るのかっていうところで、考えるところはありますか?

「そうですね。先生個人でなんとかしよう、野球部を強くしようってことは、もう限界が来ていると思いますね。

今、時代的に、白山もそうですけど、いわゆる少子高齢化が進んでいる、そして過疎化も加速している。地方になると、高校の定員割れは当たり前で、もう公立高校が潰れちゃいそう、廃校の危機になっているような自治体がある中で、要は学校がなくなってしまうと、子どもの教育を考えた時に、もうここには住んでいられないとなります。

その結果、その町の人がどんどんいなくなって、そうすると自治体が潰れちゃうという危機感があります。だから街ぐるみで高校を盛り上げようという機運が高まっているんですよね、特に地方部では。

東先生は、白山高校を離れて、昴(すばる)学園高校って、公立なんですけど、他の地域から生徒を呼んで全寮制でやっている高校があって、そういう高校が、いろんな地域に増えてきているので、過ごすのは高校だけかもしれないけど、高校を出た後にその地域の良さを伝えてくれる関係人口を増やそうという取り組みが、いろんな地域が生き残りを賭けて始めているので、地域の街ぐるみで野球部を強くしようみたいな、甲子園に出て名を上げてもっと子どもたちを呼び込もうという機運が高まってきています。

僕は、新しいフェーズに入っているというか、高校野球でそういうチームが甲子園に出てきたたら面白いなと思いますね」

―――そういう意味では、白山高校みたいなところが甲子園に出ることはすごいことだったんですね。本当にすべてがガチっと噛み合った時、麻雀でいえば、リーチ一発でツモるみたいな感じで。

「本当にそうですね。“なんでこんなに揃うの!?”というぐらいのタイミングだったと思うので。その後も東先生が言っていたのは、甲子園に出た代よりも強かった代は何回もあったけれど、それでもやっぱり足りなかったと。まぁベスト4ぐらいまでは行けるんだけど、やはり何かが足りなかったと。

甲子園に出た時のようには行かなかった。自分でどうこうしようとしても無理なんじゃないかということは言っていました」

―――それは、言い方を変えれば、選手が監督を超えた瞬間でもあったんじゃないですか?

「まあ、そうですね。ただ1年間やっていく中で、甲子園となると、もう1つ、2つ超えないといけない壁というか、そこがやっぱり難しさといえますね。東先生は今も2回目の甲子園を狙って追求しているところです」

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!