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「白山高校は“リアル・ルーキーズ”ではない」
『下剋上球児』執筆に駆り立てた一番のモチベーション

写真・武馬怜子
写真武馬怜子

―――実際、白山高校の生徒さんって、“リアル・ルーキーズ”みたいな例えもありましたけども、いわゆるヤンキーとはまたちょっと違う感じですよね。

「そうです。おっしゃる通りで、ちょっとやる気が…。やる気を持っていきようがないちょっと鬱屈した感じの、どちらかっていうと無気力の方ですよね。もう俺なんか何やっても無駄だし、無理だし、甲子園なんて夢のまた夢だし、みたいな。

だから、そんなに、悪さといっても、せいぜい、端っこでタバコ吸うとか、それぐらいのもので、暴力沙汰に走るとか重い犯を犯すようなタイプではないですよね」

―――その有り余るパワーを野球に持っていったっていう感じですか。

「そういう感じでもないですよね。パワーが有り余っていないですよ。どこか“点火”されていないような感じです。

自己肯定感という話もありましたよ。入りたい高校に入れなかったとか、なんか、白山に入らざるを得なかったという、後ろ向きな状態で入学しているので、そこはかなり大きかったんじゃないかなと思います」

―――最後に、ドラマを見る方に、原案者としての立場から、メッセージをお願いします。

「なんだろう…。あれこれ言いましたけども、『下剋上球児』を書いた1番のモチベーションや欲求みたいなものは、純粋にこの面白い物語をいろんな人に知ってほしいというものです。

これは野球好きにかかわらずですけど、そういう思いがあるので、この物語を読んでもらって、どう感じるかっていうのを知りたいというか…つまんなかったならつまんなかったでもいいですし、ちょっとやる気が出たというのであれば、それはそれでいいですし、下剋上を起こしたいみたいに思ってくれたらなおさらいいですし。その辺りは本と読み手の自由です。単純に僕はこれが面白いと思ったので、ぜひ読んでくださいとしか言いようがないですね」

【取材後記】

筆者は菊地さんよりも10歳ほど年上だが、対面する前はやや緊張していた。フリーの野球記者とはいえ、著書が、TBSの看板ドラマ枠である「日曜劇場」のモチーフに採用された人だ。“大先生”のような人だったらどうしようか…。私自身も、野球好きの父親の影響もあって、長年、高校野球をウォッチしてきた自負はあるが、自分の知識量が、インタビューに耐え得るものなのか…。いろいろと考えてしまっていた。

しかしながら、菊地さんと対面し、その不安は一瞬で一掃された。全く尊大なところがなく、いい意味でオーラがなく、至って話しやすい方だったからだ。「なるほど、こんな人なら高校球児も指導者も、心を開くよなぁ」というのが第一印象だ。

それでいて、日頃、日が当たらない野球チームへも取材の足を伸ばすなど、フットワークも軽く、野球に関する豊富な知識もさることながら、野球愛に溢れ、こちらの質問にもよどみなく答えてくれる、絵に描いたようなナイスガイだった。

何でも答えてくれるものだから、こちらも聞きたいことを次々とぶつけるうちに、インタビューは脱線の連続で、いつしかただの野球談議になってしまった。それでも嫌な顔一つせずに答えてくれた菊地さんには感謝のひと言しかない。

いよいよ、ドラマが始まるタイミングでインタビューさせていただいたことに感謝しつつ、ドラマのヒットと、それに伴って、原案本である菊地さんの著書にも再び注目が集まることを願ってやまない。
(取材・文:寺島武志)

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