視聴者自身の思い出と作品がリンクする強み
平成の名曲をモチーフにした作品といえば、宇多田ヒカルの楽曲をテーマにしたNetflix『First Love 初恋』(2022)が真っ先に挙がるだろう。
収録されたアルバムの売り上げが800万枚を超えてシングルカットもされた「First Love」、そのアンサーソングにも感じられる「初恋」をインスパイアした20年にわたる壮大なラブストーリーは、Netflix国内作品の新たな代表作となった。
他にも中島みゆきの「糸」やDISH//の「猫」など、実在の曲を題材にした作品は少なくない。それらの強みは、なんといっても、誰もが知る“あの”名曲をたっぷり使えること。主題歌から逆算されて物語が作られているため、最初からすでに雰囲気が出来上がっており、ストーリーにも入りやすい。
視聴者自身の思い出と楽曲が重なることで、登場人物に感情移入がしやすくなる。さらに、昨今の平成リバイバルブームの後押しもあり、作品自体も盛り上がりやすい傾向にあるだろう。
かくいう筆者も平成初期生まれで、HYの「366日」はド真ん中世代なのだ……が、いまいち物語に乗れずにここまで来てしまった。平成を代表するラブソング、さらには“両片思い”という流行りの要素も取り入れているのになぜ……?その理由を考えたい。