ヒロイン・明日香の覇気のなさ
問題は明日香だ。彼をエンパワーメントすべき立場の明日香にあまりにも覇気がない。ようやく自信をつけた遥斗と再び結ばれる未来があったとしても、また共倒れになるのではないかと思ってしまう。
そもそも、本作は王道ラブストーリーでありながら、大人になって行き詰まった明日香たちの“人生立て直しストーリー”でもある。
かつて吹奏楽部に所属していた明日香の場合は、音楽教室の受付として働くものの、大好きな音楽と向き合わなかった自分に負い目があるのか「期待しなければ失望することも傷つくこともない」と言い聞かせながら、なんとなく毎日を重ねていた。
おそらく本人が思う以上にポテンシャルはあって、背中を押してくれる友人や同僚もいるのに、なぜか消化試合のような日々を過ごしていた。
しかし、明日香も物語の後半くらいで、やっと自分の好きなものと向き合うことを決意する。音楽サークルに参加して、やりたかったクラリネット講師にも手を挙げた。けれど、彼女の中には常に「このままでいいのかな」というぼんやりした不安がある。
一歩踏み出した自分をもう少し認めてあげてもいいと思うのだが、第10話では「そんな状況にも焦らなくなってきた」というネガティブ・セカンドステージにいよいよ突入してしまった。