「オファーを受けてもらえるとは思ってなかった」
永山瑛太との約20年ぶりの再会
―――キャスティングについてお聞きします。翔(かける)役の永山瑛太さんとは映画『サマータイムマシン・ブルース』(2005)以来ですが、再会してのご印象はいかがでしたか?
「そもそも脚本家と俳優って、監督と俳優ほど密にご一緒してなくて、ずっと遠い同士だけど通じあってるという不思議な感覚なんですね。まず、近年の瑛太さんの仕事の傾向からして、オファーを受けてもらえるとは思ってなかった。
パトロール隊員役で、しかも未来人の役という。(笑)間違いなく一番ぶっ飛んでるオファーだと思います。ビジュアルや振る舞いなどの役作りもそうですし、俳優としての動き方も含めて、やっぱり食えない人だなぁって思いました。全然掴めない」
―――作品を通して、瑛太さんのアドリブじゃないかと感じる場面もお見受けしました。吉岡里帆さんのリアクションも含めて、お二人の演じる廻(めぐ)と翔は、当初上田さんが書かれたイメージとは違いますか?
「違います!(笑)。『トキコイ』は辻褄とかガチガチに合わせた強い台本だから、胆力というか、結構な経験値がないと、普通はこれを崩してやろうってならないと思うんです。
吉岡さんも瑛太さんも、ガチガチの台本だからこそ逆に風穴を開けるようにぶつかってやる方が、作品がカラフルなものになるって思って自由にやって下さったと思います。
20年ぶりですけど、時を重ねてきたからこそ、こっちも台本の練り方もあるし、瑛太さんも、経験値の中でそういう動き方をしてるっていうのは、『は〜お互い生き抜いて来ましたね』となりましたね」
―――上田さんの作品では、お笑い芸人さんが出演することが多いかと思います。『トキコイ』では、シソンヌのじろうさんがご出演されていますが、今回はどのような経緯で起用されたのですか?
「キャスティングは、僕というよりはプロデューサーの岡光さんと監督と脚本家の三者で相談しながら決まりました。
僕のことで言うと、海外の人たちがジャパニーズコメディと言えばそれはお笑いになるから、僕らヨーロッパ企画は、コメディと名乗る以上、お笑いの人たちと分かり合えた方が絶対に良いと常々思っていて。
だから劇作家の中では、芸人さんと接することが比較的多いと思います。芸人さんたちからも割と信頼してもらえていると感じます。なんて言うんでしょう、スベらせないというか」
―――安心して演じられると。
「芸人さんって意外と台本に真摯に向き合う方が多いです。じろうさんも台詞を崩さない中で楽しんでくれている感じ。ちなみに、じろうさんはヨーロッパ企画の舞台を観てくださったことがあるんですよ。もちろん僕もシソンヌのコントを観ていますし、そういう中で通じ合ってる気がします」