「バレやすいものからバレにくいものまで」
脚本に仕組まれた伏線の数々
―――物語後半は、前半で張り巡らされた伏線を回収していくパートになっていきます。話の大筋に関しては全て回収できるように作っていらっしゃると思いますが、上田さんが個人的に『観てる人には分からないだろう』と思って、仕込んでいる伏線はありますか?
「ありますよ!バレやすいものからバレにくいものまで色々入っているのと、あと、それとは無関係に翔が余計なことをしてるんで、それが目眩しにもなってくれてる(笑)」
―――それは物語の大筋だけでなく、もっと小さいものでも?
「きっと(第3話)『会社休むわ』がまさか欠勤に繋がるって、みんな思わないでしょうし。そういうものを仕掛けるのが楽しいです」
―――最終話を迎えても気づかれなさそうな伏線もあるのでしょうか?
「あるかも。自分でもよくあるんですよ。聞かれるまでその名前付けた理由を忘れていたとか。『トキコイ』では、時間の伏線以外にも、6話の80年代のセリフはめっちゃ凝ってますね。廻のお父さんのセリフは、大体が当時のヒット曲の歌詞で構成されている。一言書くのにもめっちゃ調べてます」
―――何回も見直したくなりますね。過去作についてもお聞きしたいのですが、映画『サマータイムマシン・ブルース』と映画『ドロステのはてで僕ら』(2020)では、『それだと辻褄が合わなくなっちゃうから』というセリフが両方に使われています。『トキコイ』では『私が辻褄合わせるから!』というのが廻の決めセリフですが、本作は、上田さんにとっての集大成のような作品なのでしょうか?
「それは本当にそうだと思います。今まで培ってきたタイムトラベルものの脚本を書く技術、アイディアの全てを総動員して書いてるものですね」
―――ドラマを観てから、過去作をもう一度見直したのですが、『トキコイ』では今までの上田さんの作品で出来なかったことを廻に任せているように感じました。
「そう(笑)。辻褄ってなかなかセリフで言わないし、普通は決めセリフにもしない(笑)。“辻褄”って言葉にもポピュラリティーが出てきたんです。これは自分だけのことでなく “伏線”や“回収”という言葉もかつては流行ってなかった。
ここ20年くらいでだんだんそれが育ってきて、“何周目”とか当たり前に受け入れてもらえるようになって、“辻褄”というのも根付いてきたというか、決めセリフにしてもいい時代になってきたと思いますね」