「『なぜそこまでするのか』という明確な理由がないと違和感を覚える」
創作に携わる上で徹底していること
―――歌舞伎町を舞台にした医療ドラマを作ると聞いて、佐々木さんは、下手すると今まで散々描かれてきた、ステレオタイプな歌舞伎町のイメージが再生産されるのではないかと危惧されたのではないでしょうか。そうした危惧は、プロデューサーや宮藤さんにお伝えになりましたか?
「今回の作品にかぎらず、有難いことに近年は、ドラマや映画に取材協力という形で携わらせていただく機会が増えました。私がその際にいつも制作の方に伝えているのは『ロジックが通ってないとおかしい』ということです。
例えば、身体を売ってお金を稼いでいる子が登場するとして、『なぜそこまでするのか』という明確な理由が描かれていないと観ている人は違和感を覚えます。作り手が描きたいことを優先しすぎると、往々にして現実とズレが生じる。
とはいえ、登場人物のセリフや行動に、1本筋の通った理由があれば、ちゃんと現実的にありえるかどうかのお話が出来ます。その辺は、作り手の方には必ず伝えていることです」
―――なるほど。
「女性がホストにハマっていると一口に言っても、じゃあそのホストの“何”にそこまでお金を払うのか。その理由が一貫性のある形で描かれていれば、かつての趣味や生い立ちといったキャラクターのバックボーンが見えてきます。結局、お金の稼ぎ方よりも、お金の使い方に人となりが出ると私は思っているので」
―――『新宿野戦病院』の第2話では、ホストに熱を上げるいわゆる“ホス狂”の女性が登場しました。
「あの話で思ったのは、女の子がギリギリまでお金をかき集めている描写がワンカットでもあれば、間に合うか間に合わないかという切羽詰まった状況がドラマを観ている人にもより強く伝わったかもしれないということです。
勿論、ドラマとして何を残して、何を削るべきか。とても難しい問題です。今回、特に1話と2話には、準備稿の段階でがっつり打ち合わせに参加させてもらい、ドラマには映らないキャラクターのバックボーンについても意見をさせていただきました」