「一度組み上げたジェンガをもう一度再構築されている」
佐々木チワワから見た脚本家・宮藤官九郎
―――佐々木さんは、歌舞伎町の住人として、『新宿野戦病院』で描かれているような境遇を実際に生きている方々と交流があります。それもあって、「取材協力・佐々木チワワ」と名前が出るからには、リアルを伝える上で果たすべき責任も大きいのではないでしょうか。
「責任もあるし、『関わっててそれかよ』とは絶対に言われたくないという気持ちがありました。私は、ルポやエッセイ、小説などさまざまなジャンルの文章を書いていますが、創作とルポの差異を私なりの言葉で表現すると、『リアル』と『リアリティ』の違い、ということになります。
リアルのまま描いてもたいして面白くないことを、いかにリアリティを持たせて面白くするかがエンタメだと思っていて。リアリティはプロの方が追求する。私はリアルとして譲れない範囲をお伝えする。作り手の方々とお話する時は、いつもそうした意識を持っています」
―――なるほど。面白さを追求する作り手の発想が、著しくリアルとかけ離れる時は、すり合わせが必要ですよね。脚本をリライトする必要が生じた場合、宮藤さんはフレキシブルに対応してくれるのでしょうか?
「最初、第2話のプロットを読ませてもらって、『ここに違和感を覚えます』と監督、プロデューサーにお伝えしました。それから少しして、修正が上がってきたのですが、セリフ回しやテンポ感が、1回目より2回目の方が明らかに面白くなっていて驚きました」
―――佐々木さんから見て宮藤官九郎さんはどんな方ですか?
「勝手に分析をして恐縮ですが、ご本人の描きたいものや世界観をしっかり持ちつつ、ドラマという枠で出来ることと出来ないこと、プロデューサーや監督の意向など、複数の観点をドラマに盛り込んでいて、すごく柔軟な方だなと思います。
言うなれば、一度組み上げたジェンガを、他者の意見を踏まえて、もう一度再構築されているわけです。でも、その中でも譲れない部分はしっかりあって、それがちょっとセリフを変えたりして残っていたりするのが、すごく面白かったです。
一若手クリエイターとして、宮藤さんの脚本が完成するプロセスを間近で見ることができて、すごく贅沢な勉強をさせてもらいました」
―――実際にドラマをご覧になってみて、いかがですか?
「キャラクターが回を重ねるたびに魅力増していって、すごく楽しいドラマだと、イチ視聴者として楽しんで観ています。凄く良いなと思う点はいくつもあるのですが、1つ挙げるならトー横キッズと呼ばれるような子たちの描き方です。
彼、彼女らは大人から『可哀想』だと一方的に同情されると、『そういう風に扱いたいんでしょ』と逆に拒絶してしまうところがあります。だから私が取材をする時は、対話をするという意識とリスペクトをもって接しています。打ち合わせではそんなお話もさせていただいたので、しっかりドラマに反映されていて嬉しかったです」