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「歌舞伎町には懐の深さがある」
歌舞伎町ライターとしての今後

佐々木チワワ
写真:武馬怜子

―――ジレンマがありますよね。例えばトー横キッズの集いの場を封鎖して『あなたの価値観は間違っている。将来が心配だ』と言っても響かない。一方で肯定的な言葉を投げかけて搾取しようとする大人がいる。どちらでもなく、現場を肯定しつつ正しい道に導く、という言い方も抑圧的かもしれませんが…。

「選択肢は1つじゃないと知ることが大事なのではないでしょうか。『聖まごころ病院』みたいに何か困ったときに頼れる場所。親でも教師でもない第三の大人に触れ合う場として歌舞伎町は良いんじゃないかと個人的には考えています。

今の社会は、核家族化が進んで、中には高校、大学まで第三の大人に触れ合う機会が全く無い人もいます。10代のうちに色んな大人を見て『この人みたいになりたい』とか、『こういう人にはなりたくない』と、見極めればいいんじゃないかと。極端な話、歌舞伎町にいたら、『なりたくない大人』しかいませんから。反面教師にすることで、最終的には更生するかもしれません。

私自身、人生をより良く生きるには『良い大学、良い企業に就職しなければいけない』と思い込んでいた中、歌舞伎町で色んな人と出会って、選択肢が広がって、気持ちが楽になりました。歌舞伎町にはそういう懐の深さがあると思います」

―――最後に佐々木さんご自身について、お話を伺えればと思います。今、新しく取り組まれていることはありますか?

「最近は、子供の非行に悩む親御さんから相談を受ける機会が増えました。先日、娘をトー横で亡くした父親の方から『話を聞いてほしい』とメールをいただいてご自宅にお伺いしたのですが、『僕の育て方が間違っていたんだろうか』と思い悩まれていて。私も15歳から歌舞伎町にいたので、『あくまでも私の場合は』と当時の自分が考えていたことを共有しました」

―――なぜ自分の娘は亡くなってしまったのか。何を考えていたのか。そうした苦悩を話せる相手は少ないのかもしれません。

「自分も年を重ねて、改めて親子関係の問題が根深いと感じているところです。自分の子どもに向き合えない親を一方的に糾弾しても、親だって人間なので、子どもだけでなく親へのケアも考えないと、問題の解決には繋がりません。『新宿野戦病院』のようなエンタメ作品がそうした簡単には解決できない難しい問題について、考えるきっかけになればいいのかなと思っています」

(取材・文:山田剛志、あさかしき)

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