夏と海の会話がギクシャクしているワケ
11話では、夏が対話相手の感情を上手く読み取れていない様子が見てとれた。海は母親が亡くなったことを理解できていないわけではないが、水季の痕跡をどこかで探している。
年相応に寂しさを感じ、母との思い出を支えにしようとしているのだろう。一方で夏は、海が母の死を乗り越えることが必要だと信じている。だから、「ママはいない人なの?」と問う海に対して「俺はいなくならないから。2人で頑張ろう」と返してしまう。海が求めている言葉はきっとそれではない。
誰よりも思いやりのある人間なのに、海にとって最も残酷かもしれない現実を突きつけてしまった夏。もちろん、夏からすれば一方的に水季に別れを告げられ、急に子供がいることがわかり、突然父親として生きていくことを強いられたわけであり、エクスキューズはいくらでもある。
津野(池松壮亮)に「海ちゃんいる、いないの話してないですよ。わかります? いるとかいないって話してるの月岡さんだけです。いたとかいなくなったって話してるんです。わかんないですよね、南雲さんいた時もいない時もお前いなかったもんな」と強い言葉をぶつけられるのは理不尽にも感じられる。
だが、子供を認知したのも、引き取って2人で暮らすと決めたのも夏だ。それを夏自身、十分承知しているから、あらゆる理不尽を引き受けようとしているのではないだろうか。子供にとっていつまでも「惜しい」父親であることは許されない。ましてや母親も母親代わりになる人もいないのだから。
フィクションの世界ではたいていハッピーエンドで終わるが、『海のはじまり』のラストは全く読めない。夏はさらにもう一段人として成長するのか、それとも…。最終話も見逃すことができない。
【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
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