表情と声、間
目黒蓮の演技の魅力
目黒が初めて出演したフジテレビ系のドラマは、2021年1月期放送の木村拓哉主演ドラマ『教場II』での生徒役。警察学校らしいキビキビとした動きはもちろん、長身や引き締まった体型からも説得力をもたらした。
映画単独初主演を務めた映画『わたしの幸せな結婚』(2023)では、明治・大正期を彷彿とさせる架空の世界を舞台に、心を閉ざした冷酷無慈悲なエリート軍人久堂清霞を演じた。漫画原作らしい架空の世界を舞台に、こちらも多くを語らないキャラクターではあったが、目黒の表情はセリフ以上に心情を語り、誰もが認める演技力を発揮した。
俳優・目黒蓮の名を一気に轟かせたのが『silent』(フジテレビ系、2022)だ。若年発症型両側性感音難聴を患う佐倉想役を熱演。音が聞こえなくなるにつれての心の動きをはじめ、手話で一生懸命に思いを伝えようとする姿、そして時折見せる柔和な笑顔の印象もいまだ色濃く残っている。
『海のはじまり』も同様に、演じた夏と共に目黒の一生懸命さも伝わってきた。夏のプロフィール欄には、「めんどくさいことや、頭を使うことなどを避けるようにして生きてきた部分もあり、特に大きな挫折を経験したこともなく生きてきた」とあるように、ごく普通の青年だ。
目黒の演技にはまずその役柄を損なわない、素朴さ、普通っぽさがある。
ジュニア時代から様々な作品に出演して俳優道をひた走るタイプもいるが、目黒はジュニア時代はユニット活動のほかは舞台出演が多く、テレビドラマへの出演は多い方ではなかった。
それが功を奏したのか、作り込み過ぎないナチュラルな表情が親近感を誘い、物語をリアルに引き立てていた。持ち前の低く丸みのある声色も、夏の人柄とマッチしており、物語を軽く見せないエッセンスとなって活きていた。