まひろの瞳にうつる道長
ラストに三浦翔平が見せた怪演は凄まじく、「何もかも、お前のせいだ!」と道長に対して敵意をむき出しにする。もはや人の声が届かぬであろう伊周に「今後、お前が政に関わることはない」と冷静に言い放つ道長は、悪役に見えてしまった。その場に鉢合わせしたまひろの瞳はまっすぐ道長を見据えながらも悲しみに濡れている。
かつて「片時も目を離さず、誰よりも愛おしい道長さまが政によってこの国を変えていく様を、死ぬまで見つめ続けます」と誓ったまひろ。あの日、月明かりに照られた道長がまひろには誰よりも眩しく見えたに違いない。きっとまひろの目には今も道長が眩しく映っているし、道長もまひろとの誓いを変わらず胸に抱いている。
しかし、少なくともそのために誰かを犠牲にできる人間ではなかった。父のようにはなりたくなかったが、自分の理想を叶えるためには時に悪魔に心を売る必要もあった道長。
その過程で少しずつ良心が鈍り、翳りを生んでしまったのだろう。まひろの最後の表情はそんな道長にがっかりしたというより、隆家が伊周の姿を見たときと同じように、憐んでいるようにも見えた。
(文・苫とり子)
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