「逃げ出す口実にしていませんか?」
アンジェラは、黒田から疑いをかけられたマリを気にかけていた。同じく日本とフィリピンのミックスだからということもあっただろうが、マリのいろんな事情で日本に来た子どもたちを助けられる教師になりたいという夢を応援していたから。アンジェラもまた、母親のオーバーステイにより隠れて暮らしていたところを、近所の小学校の先生に助けられ、彼女のようになりたいと思い続けていた。
暴力は断固否定で人の夢を応援できるやさしいアンジェラ。しかし、彼女が黒田に怪我を負わせたとして大きな問題に発展してしまう。アンジェラから話を聞いても、どうにも納得がいかない藤竹。「結論が乱暴すぎる」という言い回しが、なんとも藤竹らしい。
アンジェラの欠席が続いて数日。藤竹がマリに、アンジェラが退学になってしまうかもしれないことを告げると、マリは黒田との間に起きた出来事を話しはじめた。
実はあの日、マリの前に再び現れた黒田は、話の流れからマリのペンケースを馬鹿にし、拾い上げようとしたマリの前でそれを蹴り飛ばした。高校入学のお祝いにと、妹がプレゼントしてくれた大事なペンケースだったとは知らずに。怒りに震えたマリは、ペンケースから散らばったカッターを握り、黒田のほうへ歩み寄る。アンジェラは、マリから黒田を、そしてマリ自身を守るために、身を挺したのだった。
勉強にもついていけないし、自分の夢よりマリの夢、というアンジェラに対して、「逃げ出す口実にしていませんか?」と藤竹。痛いところをついてくる。そのうえで、「夢に優劣なんかない」とアンジェラに伝える。生徒のことをよく観察し、熱を帯びすぎることなくフラットに対応する。まっすぐ見てしまったら吸い込まれそうな窪田正孝の瞳が、藤竹としてこちらの心を掴んでくる。
しかし、真犯人が見つからない以上、アンジェラの退学は避けられそうもない。