現代社会を切り抜いたような内容
物語は次期総理候補の殺害と現役内閣総理大臣の殺害未遂というスケールが大きいのも魅力的である。
次期総理候補の殺人に現役の総理の殺人騒動…大久保利通が殺された“紀尾井坂の変”を連想させる日本を揺るがすテロである事は間違いない。また事件の裏では政界や上層部達もしのぎを削る権力闘争が蠢いている。
20年以上前に放送されたS2「秘書がやりました」で政界に生きる人達を“異星人”と評していたが、今回も例外なく異星人揃いである。
盟友である総理を裏切り総裁選に出馬しようとした芦屋議員。支持率の低下を打破するため、芦屋の死を利用しようと画策する藤原総理。藤原を切り捨て芦屋を擁立しようとする与党最大派閥である利根川幹事長。まだ見えぬ犯人だけでなく権力者達の権謀術数をどう攻略するか。“真相オタク”特命係の立ち回りにも期待が高まる。
しかし事件以上にギョッとするのは現実世界にリンクし過ぎたシナリオである。支持率20%以下の眼鏡をかけた総理大臣が解散総選挙を行う…これは前総理を連想しない方がおかしいだろう。
更に派閥や裏金問題、収支報告しているからセーフという議員も登場し、観ているものがドラマなのかドキュメンタリーなのか混乱するほどに現代社会を切り取っている。政治と金の問題に政治家を狙ったテロ…。現代社会を常に切り取ってきた『相棒』だからこそ扱えるリアリティと面白さが詰まっている。
作中で角田課長が「給与は上がんねえのに物価と税金だけ上がってよ。頼みの政治家は裏金だなんだって自分ファーストだろ?」と小市民の代弁とも考えられる発言をしているが我々の暮らしも少しだけでも良くなってほしいと同じ小市民ながら祈ってしまう。
犯人だけでなく政界のスキャンダルも暴きかねないという理由で動きを封じられた特命係。そしてまだ見えぬ犯人の正体と目的は一体何なのか。事件の裏に絡むのは貧困に窮する若者達だが、そこで過去近しい境遇だった創は何を感じ何を考えるのか。後編も待ち遠しくして仕方がない。
(文・Naoki)
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