ライオンの本名は「愁人」?
無事に合流できた3人。美路人の顔にも安堵の色が浮かんでいるようだった。自閉スペクトラムを抱える青年として、細かな動き、発声など細部までこだわった表現をしているが、それに加えてこのような感情をしっかりとのせてくるあたり、坂東龍汰の巧さが際立つ。
家に帰り、寅吉(でんでん)が切ってくれたすいかを食べる姿が微笑ましい。しかし、後日、事態は急展開を迎える。洸人が流していたテレビから「橘愛生」に関するニュースが流れる。愛生という珍しい漢字に、これは姉なのでは、と疑う洸人。
さらにニュースは、息子の愁人も行方不明であることを告げる。もしやと思った洸人が、走り回るライオンに「愁人」と呼びかけると、ライオンは返事をし、その後一切の感情をなくしたかのような顔になる。
やはり、ライオン=愁人は洸人たちの異母姉弟である愛生の息子なのだろうか。そうであるならば、愛生はなぜ洸人たちに息子を託したのだろう。
かつての愛生は奔放そうな性格であるから、単純に育児放棄かもしれない…と思っていたが、「ソフトクリームの広場」でソフトクリームを落とした美路人に、周囲の目線を気にして助けられずにいた洸人に代わって、すぐに駆け寄っていた。人は変わる。だとしても、そんな愛生が自らの子どもに手を上げたとは考えたくない。
愁人の父親からDVを受け、そこから逃れるために洸人を頼ったという可能性も考えられる。それならば名前を隠しておくことも合点はいくが、では、肝心の愛生は一体どこへ消えてしまったのか。