また、ひとつの光が消えた…塩野瑛久の美しくも繊細な芝居の魅力とは? 大河ドラマ『光る君へ』第40話考察レビュー
吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。体調が思わしくない一条天皇が譲位を決意し、25年に渡る治世に幕を閉じる…。今回は、第40話の物語を振り返るレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
また、ひとつの光が消えた…。
またこの作品からひとつの光が消えた。『光る君へ』第40回では、一条天皇(塩野瑛久)が譲位し、25年続いた一条朝が幕を閉じる。
中宮・彰子(見上愛)が2人目の皇子を出産した直後から体調を崩していた一条天皇。自分の生い先がそう長くはないことを悟ったのか、第一の皇子・敦康親王(片岡千之助)の元服の儀式を急ぎ、立太子させる道を整えていた。
だが、そこに道長(柄本佑)が壁となって立ちはだかる。自身の孫である第二の皇子・敦成親王(濱田碧生)を次の東宮に据えようとする道長は公卿たちにそれとなく働きかける。
四納言のなかで行成(渡辺大知)だけは一条天皇の意向を尊重したいと考えていたが、じわじわと外堀を埋めていく道長を見て、もうその道は残されていないことを悟ったのだろう。
「敦康親王様を東宮とすること、左大臣様は承知なさるまいと思われます」と行成にはっきり告げられた一条天皇は、病で心が弱っているのも相まってそれ以上は抵抗できず、いとこの居貞親王(木村達成)に譲位するとともに敦成親王を次の東宮とする旨を伝えた。
この決定を受け、道長に怒りをあらわにするのが彰子だ。敦成親王の母であり、敦康親王の母でもある自分に何の相談もなかったことに対して、「父上はどこまで私を軽んじておいでなのですか!」と訴えかける。
「仰せのままに」と道長の決定に全て従っていた頃の彼女はもうどこにもいない。一条天皇という愛する人を得て、3人の母となった彰子は守るべきもののために自分の意見を主張できる強い女性となった。
しかし、そんな娘の心を道長は「政を行うは私であり、中宮様ではございませぬ」とたった一言でへし折るのだ。その顔はもはや父親ではない。娘の思いさえも踏みにじって進む権力者の顔だ。