「顔か歌詞かなら、顔を選ぶ」
結果として、盗作したのは黒川のほうだった。実はシホが先に書いたという証拠もあったのだ。それなのに、なぜシホは提示しなかったのか。
シホが歌詞を書いていたのは高校の卒業アルバム。そして見られたくないのは、高校時代の自分の写真。実は、シホは整形をしていた。証拠としてアルバムを提出すれば、歌詞をパクっていないことは証明できるが、整形がバレてしまう。
「顔か歌詞かなら、顔を選ぶ」
整形がバレるぐらいなら、盗作の疑いがかけられたままのほうがいい。それぐらい、シホは整形だということを知られたくなかった。アイドルとして整形がバレるのは致命的かもしれない。しかし、それ以上に、シホにとっては「顔」の価値が高かったのだろう。
顔のせいで辛い思いをした学生時代。整形してから、世界が変わった。アイドルにスカウトもされた。顔が変わったら、世界が変わった。
亮子(趣里)は卒業アルバムという証拠を提示せずに、シホの勝利を掴んだが、遅かれ早かれ整形であることはバレるだろう、と言う。世間に知られるのが遅くなればなるほど、シホにのしかかってくるものも大きくなるだろう、とも。