「自分を救おうとする人間しか手助けできない」
新たなハブを見つけられそうになっていた佳純だったが、同じクラスの真耶がそれを留めようとする。真耶は佳純も自身と同じく、リストカットをしていることを見抜くと「うちら、同類でしょ?」と持ち掛け、一緒にリストカットをしようとしつこく誘う。
たしかに、2人にはリストカットをしているという共通点はある。辛さから逃げるために自分を傷つけずにはいられなかった点は同じだろう。だけど、気持ちの部分では明確な違いがあった。
真耶から届いた腕の傷跡の写真を見て、佳純は「グロいよ」と言った。つまり、佳純にとってリストカットはできることならやめたい行為なのだ。一方、真耶にとっては注目を集めるための手段。やめたいという気持ちは、残念ながら感じられない。
そんな真耶に、佐久間は保健室から出て行くように言う。人の命を危険にさらすような人間を、保健室には置いておけない。そこまではっきりと言ってしまって大丈夫なのだろうかと心配になるほど、きつい言い方だった。
だが、佐久間には生徒が気を引くためにとった行動に振り回されて視野を欠き、後悔した過去があった。できることなら全員救いたいが、現実問題として「自分を救おうとする人間しか手助けできない」。
これが、佐久間が養護教諭をしていくなかでいまのところたどり着いた答えなのだろう。実際、「死んでやる」と言い残して保健室を後にした真耶は、ほかの仲間と楽しそうに談笑していた。だからといってこのまま真耶を放っておいていいわけではないだろう。彼女にも、このままではいけない、と思うようなきっかけが訪れることを祈る。