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宏樹もまた“耐え忍ぶ側”であり“戦う側”の人間だった

『わたしの宝物』第2話 ©フジテレビ
『わたしの宝物』第2話 ©フジテレビ

 宏樹は、大手商社に勤める優秀な会社員。人当たりもよく、仕事も順調で、部下からの信頼も厚い…というのは少しばかり聞こえがよくて。実際は、上司からパワハラを受け、後輩からは「要領が悪い」「ああいう上司がいると便利だよな」と陰口を叩かれている。美羽が宏樹のハラスメントに耐えていたように、宏樹もまた、“耐え忍ぶ側”であり“戦う側”の人間だったのだ。

 そんなことが積み重なれば、心がいっぱいになって、誰かに当たってしまいたくなるのもわからなくはない。だからといって、モラハラは肯定できないけれど。きっと、美羽への甘えもあったのではないかと思う。

 本来、宏樹は真面目で一生懸命で、優しい人間なのだろう。でも、社会ではそんな思いやりのある人こそ追い詰められ、疲弊していく。そんな時、「逃げちゃえば?」なんて言ってくれる人がいたら、どんなに心が救われることか。

 宏樹が偶然出会った喫茶店「TOCA」のマスター・浅岡忠行(北村一輝)は、まさに欲しい言葉をくれる“救世主”だった。まるでNetflixドラマ『地面師たち』(2024)の竹下のような怪しい風貌にドキッとするが、そのあっけらかんとした性格に宏樹は心を開いていく。

 モラハラまがいのことをしてしまっているが、宏樹は結局のところ美羽が好き。それは、美羽と出会った時にもらったハンカチを、お守りのように握りしめている姿からも容易に受け取れた。そんな不器用で、世渡りが意外に下手な宏樹は、田中圭の繊細な演技でより人間臭く、身近で、リアルなキャラクターに映る。だからなのか、美羽と2人で話し合うシーンは、とくに記憶に残る場面だった。

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