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ききょう「ここは、私が歌を詠みたくなるような場ではございませぬ」

『光る君へ』第41話より ©NHK
『光る君へ』第41話より ©NHK

 一方で、道長がどんどん孤立する状況を作り出しているのは道長自身でもある。

 ある日、彰子の和歌の会に乗り込んできたききょう(ファーストサマーウイカ)。敦康親王(片岡千之助)からの椿餅を届けにきた彼女に、彰子は「敦康様はお健やかか?」と尋ねる。

 すると、ききょうは「もう敦康様のことは、過ぎたことにおなりなのでございますね。このようにお楽しそうにお暮らしとは思いもよらぬことでございました」と皮肉交じりに返し、その場を凍りつかせた。

 さらには、空気を良くしようと「私たちは、歌の披露をしておりましたの。あなたも優れた歌詠み。一首、お読みいただけませんか」と声をかけた赤染衛門(凰稀かなめ)に対しても、ききょうは「ここは、私が歌を詠みたくなるような場ではございませぬ」と不躾な態度を取る。

 ようやく一条天皇の死から立ち直り、笑顔を見せるようになっていた彰子が一瞬にして悲しい顔に。道長に対するききょうの怒りは理解できるが、それを何の罪もない彰子にぶつけるのはお門違いにもほどが過ぎる。

 だが、真面目で心優しい彰子は自分が父の言いなりになっているせいで傷ついている人がいると、重く事態を受け止めたのだろう。

 そんな中、敦康親王が元服したにもかかわらず、彰子の顔を見るために御簾を超える。これまでは自分が東宮に選ばれなかったことも甘んじて受け入れるなど、どこか控えめな印象があった敦康親王。

 そんな彼がこのような大胆な行動に出たことに意外性を感じると同時に、彰子に向かうその熱量に戦慄を覚える。父譲りの一途さは微笑ましくもあるが、今回彰子に見せた笑顔はあまりにも重い愛を感じさせた。

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