事件を解決させたい不破の思い
不破は有力な情報を掴んだと言い、やがて証拠づくりに動いていく。
だが、そんな不破に随時ストップをかけるのは飛鷹だった。不破は飛鷹の真似事をしているが、2人の違いは“犯人が確実にわかっているか否か”だ。
不破は血まみれの包丁を握る新山を見てはいるものの、直接犯行を目撃したわけではなく、断定するには不十分なところがある。にもかかわらず、逮捕に向けて強引に捜査を進める様子は、普段の冷静さを残しつつも、どこか暴走しているようにも見えた。
飛鷹は犯罪者を法の下へ引きずり出すことを“正義”としながらも、同時に1歩間違えれば冤罪を生みかねない危険な行為であることを肝に銘じている。一方、不破は飛鷹の”正義”に共鳴する素振りを見せているが、この無鉄砲っぷりは、なんだか飛鷹の言う“正義”を利用しているようにみえてならない。
だが、そんな不破には事件を否が応でも解決させたい理由があった。事件が解明されれば、あの日以来笑わなくなった壮太の笑顔が見られると思ったのだ。クールで合理的だが、意外にも情に厚い一面を持っている。不破の人間性がより立体的にみえた瞬間だった。
左利きのグローブにタバコを吸わない新山、壮太が描いた父親の絵など…。飛鷹が捜査を進めれば進めるほど、新山が犯人である線はなぜかどんどん薄れていった。そして、固く結ばれた事件の紐は、壮太の語りによって徐々に解かれていく。