話すことで広がる輪
定時制高校では世代間の衝突がしばしば起こる、とベテラン教師の木内(田中哲司)は言う。その人がどういう背景を持ち、どんな考え方をするのかは、世代が異なれば大きく変わってしまう。
だが、決してこれは世代だけの問題ではない。隣にいる人がどんな苦しみを抱いているのかを、わたしたちは本当の意味で理解することは難しい。まずはそれを念頭に置きながら、自分の物差しで測ることをやめ、知ろうとすること、想像することを忘れないようにすることから、思いやりは生まれるのだろう。
長嶺は藤竹に促されるまま、クラスメイトたちの前で入院中の妻・江美子(朝加真由美)がどんな環境で生き、どれほど高校への憧れを抱いていたかについて話をする。淡々と語るだけだったが、みな江美子の姿を目の前に思い浮かべたはずだ。
話を聞き終えた岳人は「奥さんの代わりに来てんのか?」と、アンジェラは「いっぱい質問するのは奥さんの前で授業を再現するため?」と問いかける。相手のことを知ること、それにより想像することで、理解につながる。長嶺は答えなかったが、クラスメイトたちとの溝は修復され、また教室に生徒たちが戻ってきた。