イッセー尾形の圧巻の一人語り
天体の衝突は生物の終わりもはじまりももたらすが、東新宿定時制高校における世代間の衝突は誰かを取りこぼすのではなく、新しい輪を広げるきっかけになった。
高校生活を楽しんでほしいと願う江美子の後押しもあって長嶺が科学部に加わったことで、これからはいままでよりも大掛かりな実験装置がつくれるようになりそうだ。長嶺には岳人ほどの科学への興味はないかもしれないが、長年工場で積んできた経験に基づく知識がある。きっと大きな力になることだろう。
今回見どころだったのは、長嶺を演じたイッセー尾形だ。江美子のお見舞いに向かうときの後ろ姿、首にタオルをかけた姿から漂う哀愁もさることながら、約10分間に及ぶ一人語りは圧巻だった。
大きな抑揚も回想もなかったのに、飽きることもなく聴かせる。静かななかにたしかに存在していた緩急と感情表現から、はっきりと情景が浮かんできた。
静かといえば、藤竹を演じる窪田正孝も同様だ。今回は特に静かに見守っている印象が強かった。長嶺が話す場を設けるなど枠を整え、あとは生徒たちに任せるスタンス。
これは第1話で藤竹が語っていた学校というものの在り方に近い。藤竹という教師像に屈強なイメージはないが、窪田が演じることでそこに包容力がプラスされているように感じた。それはまるで、生徒たちを静かに見守る教室そのもののようだった。
(文・あまのさき)
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