手探りで向き合う難しさ
また、破壊衝動は周囲ではなく、自身にも向き、刃物かなにかで足を傷つけた形跡を牧野は見つけている。子供が自ら足を傷つけているのは想像するだけで痛々しいし、心中を慮っても苦しい気持ちになる。土曜21時に放送するには重すぎるのではという懸念もある。だが、だからこそ制作陣から子供の精神疾患と向き合うという覚悟も感じられる。
そもそも精神疾患は外傷と違って、あれをしたからこうなったという原因をはっきりと特定することはできない。羽菜にしても、両親の不仲の影響はあるのだろうが、現時点でこれと決定づけられるような事実は明かされていない。
もちろん、次週以降に明示される可能性はあるが、この手探りで向き合っていくような難しさこそ精神疾患のリアルなのではないだろうか。
多様性の時代と軽々しく言うのも憚られるが、昔に比べると家族の形も多様化している。複雑な家庭で育った人だって珍しくなく、羽菜と自身を重ねてしまった視聴者もいることだろう。
特に思春期であれば、羽菜のような家庭環境になくとも、自分が何に不満で、なぜこんなにイライラしているのか見失ってしまうこともある。それほどまでに子供というのは未完成で、不安定な生き物なのだ。だからこそ、大人は子供の異変に敏感でなくてはならないし、牧野というキャラクターを通してその重要性を教えてくれる。