美鈴(是永瞳)が体現する現代の女性像
虎之介が部屋の片づけを終えた後、2人の間に束の間の穏やかな時間が流れる。しかし、虎之介の「社会人ってなんで社会人っていうんですかね。ちゃんと社会に出ないと、人として認められないってことなんですかね」という言葉が彼女の弱った心に再び波風を立ててしまった。
「社会人になるってね、生きてるふりがうまくなることだよ。生きてるかわかんなくなっちゃった」
美鈴は社会人として生きることにつらさを感じているようだ。彼女はいかにも真面目そうで、小綺麗であり、平凡なOLという印象を抱かせる。また、部屋は広く、マンションも立派であることからも、経済的にある程度恵まれていることが察せる。
具体的な描写がないのであくまで想像でしかないが、美鈴は会社ではうまく立ち振る舞い、周囲からはその場にうまく適応しているように見えているのではなかろうか。
現代において美鈴のような女性は少なくないように思う。都心には髪をきれいにセットし、オフィスカジュアルに身をつつんで器用に歩く女性たちがあふれている。しかし、彼女たちの心の中は他人にはわからないし、彼女たちも美鈴のように生きてるふりがうまいだけなのかもしれない。