三つ子の葛藤
品子たちが1人しかいないという設定になっていたのは、双子は災いを呼ぶという迷信があったから。しかし、品子たちはそれを伝えられておらず、「何も知らなかったから、ただ守るしかなかった」らしい。
自我が芽生え始めたとき、彼女たちはどれほど葛藤を抱いただろうか。明らかに、違う人物なのに、外見の個性を出さないようにしなければならない。いるはずなのに、いないようなものとして扱われる。どれだけ、しんどかったことか。
それだけでなく、三つ子のうちのひとりが亡くなったときも、死を公表することはできなかった。事件にすることもできず、ただひっそりと弔うことしかできない。
人形が死んだというように見せかけようと決めたとき、2人はどんな気持ちだったのだろうか。きっと、悔しくて悲しくて、切なかったと思う。
だからこそ、事件の真相が明らかになった後、品子たちが自分たちの好きな格好をしている姿が見られて、本当に良かった。もう、自分の存在を隠さなくてもいい。人形のフリをしなくてもいい。人形っぽい服装に身を纏う必要もない。