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胸がざわざわする…“鬱ドラマ全盛期”90年代のムードを体現する髙橋海人の天賦の才とは? ドラマ『95』考察&感想レビュー

text by 田中稲

テレビ東京開局60周年記念ドラマ『95』(テレ東系)。 本作は、早見和真の小説を原作とし、主演の髙橋海人が1995年に起きたある出来事について回想する。今回は、1995年代のカルチャーを踏まえながら最終回目前の第9話までの物語を振り返るレビューをお届け。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:田中稲】

ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。

青春の「もがき」がすさまじいパワーを引き起こす

ドラマ『95』第9話よりⒸ「95」製作委員会
ドラマ『95』第9話よりⒸ「95」製作委員会

 いよいよクライマックスに突入。最終回直前、6月3日放送の第9回は、感情がサンドバックの如く揺れに揺れた。セイラ(松本穂香)は牧野(三浦貴大)との援助交際の写真を学校中に貼られ、翔(中川大志)はセイラと別れることを強いられる。そして花火作戦決行の大晦日当日、チームは敵対する武闘派集団に狙われる。最悪の展開だ。

 しかし不思議と、これまでの回にない力強さと明るさも感じたのだ。絶望の限界を超え、何かがはじけて広がっていくような!
  
 秋久が家を出るとき、バックで流れるのがTRFの「OVERNIGHT SENSATION~時代はあなたに委ねてる~」(1995)というのも素晴らしい。

 この曲が日本レコード大賞を獲った瞬間、「輝く世界が欲しかったら立ち上がろう」という歌詞に押されるように、人生を変える夜へと向かっていくのだ。ストーリー、時代、音楽がリンクしたこのシーン、エモーショナルの極みである。

 そして、武闘派集団と対決する瞬間、バーンと花開いた打ち上げ花火を合図に、翔(中川大志)と秋久(髙橋海人)の表情が、ガッと覚悟が決まった輝きを放つ。レオ(犬飼貴丈)たち3人も、そのパワーを受け、蘇るように暴れまくる!

 演じている役者が全員20代半ばから30代ということをすっかり忘れるような、青春独特の青さと無謀さを感じるアクションシーンだった。結局、迷い、答えを求め探す「もがき」が、最もすさまじいパワーを起こすのかもしれないと思った。

 ああ、やはり『95』は観ていて胸がざわざわする!

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