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90年代の若者のテーマ「自分探し」

ドラマ『95』第9話よりⒸ「95」製作委員会
ドラマ『95』第9話よりⒸ「95」製作委員会

 1990年代は、ちょうど「自分探し」という言葉が流行り始めた頃である。

 音楽も、これまで定番だった恋愛ソングを上回る勢いで、自分の生き方や、心と向き合う楽曲が増えていく。TRFの「OVERNIGHT SENSATION~時代はあなたに委ねてる~」もまさにそうだし、第7話で秋久がリピートして聴いていたMr.Childrenも然り。何も本心を話してくれない翔に苛立つ彼は、ずっとミスチルの「CROSS ROAD」(1993)を聴いていた。

 仏頂面の秋久と「チケットゥラーイ(Ticket To Ride)……♪」という、あの明るいメロディが重なるシーンは印象的だ。

 ちなみにミスチルは、1995年8thシングル「【es】 ~Theme of es~」と9thシングル「シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜」を発表し、どちらも大ヒットしている。しかし秋久は、その前にヒットした「CROSS ROAD」をチョイスするのだ。なんとも彼らしい気がする。

 成績が良く、期待されながらも、学校も家も居心地が悪い。チームに入って生きる力をもらうが、やっぱり少し浮いた立ち位置。姉・淳子に「(チームと秋久が)釣り合ってない」と指摘されながらも奔走する秋久は、まさに自分探しど真ん中。

 「翔はなぜ自分を誘ったのか? なぜ自分を主人公と持ち上げるのか? 自分がやるべきことは?」と悩むことでエネルギーを燃やし、前に進んでいくのだ。

 髙橋海人の弱さと強さの2面性、常に言葉の後ろに、うっすらと「?」を漂わせるような独特のセリフ回しは、自問自答の苦しさを余すところなく魅せてくる。天賦の才を感じずにいられない。

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