斉藤由貴のコッドマザーぶりに泣く
このドラマの見どころは、秋久たち若者だけではない。渋谷という若者の王国を俯瞰で見た大人たちもギラギラに輝いている。
秋久たちが言う、「ダセェ大人になりたくない」。その「ダセェ大人」の象徴が、若者を餌にしつつ「この街をなんとかしないと」と歪んだ責任感を持つ牧野だ。演じる三浦貴大が、メガネと運動不足っぽい体型で、90年代ならではのヤバい成金ぶりを体現している。バグった距離感で遠慮なく若者のプライベートゾーンに侵入していく感じが、本当に気持ち悪くて素晴らしい。
彼とは逆に、冷ややかな態度ながら、大人の知恵と強さを見せてくるのが、翔の母・玲子(斉藤由貴)。傷ついたセイラに向けていい放った、
「周りの顔色も、生やさしい男たちも、一切気にせずに、図太く、自分のためだけに生きなさい」
というセリフは修羅場を抜けてきた彼女だからこそ説得力がある。
秋久による「こんなつまらない大人になりたくありません」という軽蔑の言葉に対する、
「なら、なってみなさいよ、理想の大人に。案外難しいもんよ」
と返す言葉もこれまた名言。
斉藤由貴の囁くような声がゴッドマザーぶりを際立たせ、静かだが大迫力だ。
振り返って改めて思う。第9回は本当に濃かった……。