中川大志の怪演と「翔」の闇
物語のキーマンである翔は、カッコいいが面倒くさくもあった。中川大志が涼やかな顔をして演じていたが、ヤバさと人としての甘さもジワジワと出してきて、ある意味怪演。
翔はチームを作った張本人であり、親は権力者、本人はカリスマ性を持つイケメン。やっていることは正義感からである。けれど、自分のエゴで周りを振り回すことに無自覚だ。オウム真理教に少し関わっていたことがある、という設定もまた、彼の完全主義や潔癖症を感じさせる。
彼の傲慢さは、無意識で多くの人を軽んじ、傷つけてしまっていたのではなかろうか。私は勝手に『95』で描かれた闇のなかには、翔のカリスマ性が作った影もあると思っている。
宝来(鈴木仁)は翔に銃を向け「俺に興味を示さないおまえが嫌いだ」と怒るのだ。最後までチームに入れてもらえなかった栗田(井上瑞稀)もまた、「自分を見ようともしない」と、翔に嫌悪感を示していた。
翔は、彼らの悔しさにきっと気づかない。『95』からは、そんな「受け入れられなかった者の怒り」もしっかり届いてきた。