過去を経たからこそできる事
こうした過去があったからこそ、第4話では両親との関係で心に傷を負った水本羽菜(小西希帆)に「お前を助けたい」と直接的な言葉で寄り添うことを決めたのだった。
言うまでもなく、牧野はこれまでも相手が子供だろうと、自身に好意的な感情を持っていない相手だろうと、医師として「助けたい」という気持ちが揺らいだことはない。ただ、その気持ちだけでは思うようにならないことも過去の経験から知っていた。
だからこそ、羽菜に対しては自分の正直な気持ちをすべて言葉にすることで、彼女が心の中に築いていた分厚い壁を崩すことができたのだ。
保健室で羽菜の手当てをしながら、牧野は優しく語りかける。「お前の居場所は家だけじゃない。他にも頼る相手がいると知ってくれ」という言葉は大学病院時代の牧野から想像することはできないし、彼の人間としての成長を雄弁に物語る。
牧野がきちんと子供に寄り添うことができていたからこそ、羽菜は「来てもらえたのも、話聞いてもらえたのも、嬉しかったです」と笑顔で感謝を伝えるのだった。