推しからは得られない「あくび」ができる安心感
孤独を抱える人や、心のスキマを推し活で埋めようとしている人。推し活には辛い現実から身を守る側面がある一方、特に最近、推しとの関係に悩む人は多い。
推し活には、相手に愛情を一方的に注ぐというもどかしさがあるものの、周囲とリアルな関係を築くよりも勇気は必要ないように思う。まひるがRIM様の引退で落ち込んだように推しの都合で傷ついたり、ときには裏切られたと感じたりすることもある。
そうはいっても、推しとファンの間には一定の距離があるからこそ、直接的な言動で傷つけられることはないし、明確な原因がわからず関係性が薄れてモヤモヤすることもない。
筆者もまひるのように推し活に励んでいるが、心のスキマを推しの存在でうめているという自覚がある。推しがキラキラと輝く姿を見ている間は日常の不安を忘れられるし、推しのコンテンツやファン向けのメッセージを見ていると誰かとつながっているように感じられるからだ。
とはいえ、推しは優希と愛莉がまひるにしたように「大丈夫?」と心配して声をかけてくれないし、「帰ろう」と手を握ってくれることもない。また、まひるは信頼でき、無防備になれる人の前ではあくびができると言うが、推しの前であくびができる人は少ないはずだ。
まひるの推しであるRIM様は家庭の都合で引退したが、まひるは彼の引退と引き換えに「心のふるさと」を得た。まひるにとって愛莉、優希、広海(佐野勇斗)、虎之介(望月歩)はあくびができるほど心許せる存在なのだ。
まひるはRIM様との握手は叶わなかったが、まひるの代わりにRIM様と握手をしてきた虎之介と握手できた。まひるは彼の手にRIM様の手からは感じられないだろう愛情を感じたのではないだろうか。