愛生(尾野真千子)の雄弁な涙
盗聴器からは、ぬいぐるみのなかからメモ帳を見つけた洸人が、そこに書いてある文字を読み上げる声が聞こえてくる。最後には「ひゃくじゅうのおうみたいにつよくなったらむかえにいくね」と、ライオンのイラスト付きで書かれていた。これまでのライオンの行動は、すべて愛生と約束したことだったとわかる。
すると、「怖い夢を見た」と言ってライオンが目を覚ます。怪獣が出てくる夢を見たけど、逃げなかった、百獣の王だから倒したと、眠たげな声で語るのがより一層健気だ。
それを聞いていた愛生の目にはたっぷりの涙がたまる。彼女が初めて表情を変えた瞬間だった。そして、「強くなったら迎えに来てくれるって約束したから」「僕、強くなった?」というライオンの言葉に声を殺して泣き崩れる。
圧巻だった。セリフや回想もなく、ただ暗がりのなかで泣くだけではあったが、愛生の息子への愛情を感じ取るには十分すぎるほど雄弁な涙だった。
ライオンの様子にいてもたってもいられなくなった愛生は、洸人にメッセージを送り、会いたいことを伝える。もしかしたら愛生が虐待をしていたのではないかという疑いを払拭するため、洸人も誘いに応じることを決めた。