「ちょっとだけ食堂の朝子じゃない人になりたかったと」
朝子のこぼす本音に涙…。
ところが、夏八木は3人の男たちと結託して端島の組合費を盗み、忽然と姿を消してしまう。撮影所をクビになり、借金を抱えた彼ははじめからお金を盗むつもりで島を訪れていた。
オーディション話も島民の気をそらすためのカモフラージュ。映画スターになれるかもしれないという朝子の淡い期待は海の藻屑となって消えてしまった。
落ち込む朝子を、鉄平は火葬場しかない中之島に咲く桜を見に連れて行く。そこで朝子は、「映画スターになりたかったんじゃなかとよ、ちょっとだけ食堂の朝子じゃない人になりたかったと」と鉄平に思いを打ち明けた。
百合子は最初から将来が決まっている朝子を羨ましがっていたが、朝子は朝子で色んな可能性があって、何にでもなれる百合子が羨ましかったのではないだろうか。
炭鉱員や職員の家よりも貧しく、幼なじみの3人が島外の大学に進学する一方で、中学卒業してすぐに銀座食堂で働き始めた朝子。本当は流行っているものへの興味もあって、家庭用のテレビも、雑誌に載っていたようなおしゃれなワンピースも欲しかったけれど、とても手が出せなかった。