人は近すぎるものは見えづらい…。
そんな朝子の楽しみが、花を愛でること。小さい頃、海に落ちて赤痢にかかってしまった朝子は鉄平が届けてくれたガラス瓶を大人になった今でも後生大事にし、花を挿している。
映画への出演は叶わなかったが、中之島の桜が見えただけで「夢が叶った」と素直に喜べる彼女はもともと、ささやかな幸せを価値あるものとして大事にできる人だ。
ただ時々、もっとキラキラとした人生があるように思えて、手を伸ばしたくなるだけ。そんな朝子に、鉄平は中之島からの端島を見せる。夜の海に浮かぶ端島は建物の灯りでキラキラと輝いていた。人は近すぎるものは見えづらい。自分自身のことも。
朝子の世界の全てで、飽き飽きしている端島が外から見ると美しいように、朝子自身も百合子や賢将(清水尋也)からするとキラキラしていて目が離せない存在。同じように、演じる杉咲も今回は一見素朴な印象だが、可憐で存在感があり、改めてキャスティングの妙に驚かされる。