正妻・倫子(黒木華)の矜持と度量
男女問わず人を惹きつける魅力がある道長。彼を愛した一人である倫子(黒木華)は「私は、殿に愛されてはいない」と、いきなりドキッとする言葉を放つ。
道長にはもう一人の妻・明子(瀧内公美)がいるが、明子でもない、他に心から愛している人がいることに倫子は気づいていた。そのことで苦しんだこともあるが、今はどうでもいいと言う倫子。
「彰子が皇子を産み、その子が東宮となり、帝になるやもしれぬのでございますよ。私の悩みなど吹き飛ぶくらいのことを殿がしてくださった。何もかも、殿のおかげでございます」と笑顔で道長に語りかける。
時代が時代とはいえ、これまで必死に支えてきた夫に本命がいることを知って傷つかないはずはないのに、泣きわめくことも責めることもせず、今の暮らしに感謝する倫子。
正妻としての矜持と度量を見せつけられ、思わずひれ伏しそうになった。ヒロインであり、道長から愛されているまひろでさえも勝てないと視聴者に思わせる。
また、ききょう(ファーストサマーウイカ)もようやく恨みから解放されたようだ。「恨みを持つことで、己の命を支えて参りましたが、もうそれはやめようと思います。
この先は脩子様の成長を楽しみに静かに生きてまいりますので、お心おきなくご出立なさいませ」と隆家に告げたききょうの顔はすっかり憑き物が落ち、晴れやかだった。倫子もききょうも私たちの見えないところで葛藤があったのかもしれないが、人生の酸いも甘いも噛み分けて落ち着いたのもあるのだろう。