ありきたりな歌詞なのに突き刺さる…。
〈いつだって戻れるんだ 何度だってやり直せるんだ〉
奥島が歌ったのはマゼランのヒット曲「夜明けホープ」。ありがちなメロディに、ありがちな歌詞なのに、祐子たちにはひどく刺さった。きっと義光の頭には純粋に夢見ていたあの頃が、祐子の頭には自分に笑いかけてくれた純一の顔が浮かんだことだろう。
2人とも、「こんなはずじゃなかった」を重ねてきた。そう思った時にやり直せばよかった。やり直すタイミングは何度だってあったはずなのに、絵の具を重ねるように罪を上塗りして日常というキャンパスを汚してきた。
そのことに気づいた祐子と義光は奥島に全て打ち明けることを決意する。元はと言えば、純一が3000万を盗んできたことが始まりだが、ソラが言っていたように子供は責任を取れない。
取れないからこそ、代わりにお金を返すべきだったのだ。後悔しても遅いが、その反省を胸に2人は自分たちがしてきたこと全ての責任をとるつもりだった。
しかし、神様は彼らからとことんやり直す機会を奪っていく。本当のボスから裏切り者探しを頼まれた坂本と長田の魔の手が、純一に忍び寄ろうとしていた。「警察に情報を漏らしたら子供をさらう」というメッセージを受け取った祐子。
前言撤回で奥島に打ち明けるのをやめようとしたが、義光がすでに全部喋ってしまった後だった。「しつけがなってねえよ!」というソラの一言が、そんな状況じゃないのに笑える。
先が見えなくてハラハラするのに、時々気の抜けるようなシュールな笑いどころがあって、妙にリアリティのある登場人物たちに共感してしまう。まさに新感覚。最後まで目が離せない。
(文・苫とり子)
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