今も昔も、子育ては大変で、支援は難しい
『やさしい花』のあらすじは、次の通り。マンション暮らしの木原友子(石野真子)が、下の階から小さな子どもミツル(國分健太)の泣き声を聞きつけ、いてもたってもいられなくなる。
実は友子は、かつて子育てが大変な時期に、夫の卓也(西川忠志)の協力を得られず、育児ストレスから娘の葉月(早織)を虐待してしまい、葉月を養護施設に預けた経験があるのだ。
ミツルを怒鳴りつける若い母親、ユカ(谷村美月)に、かつての自分を重ねた友子は、思わず部屋を訪ねていく。そして、なんとかしてユカの力になろうと模索する――。
ユカはシングルマザーで、誰も頼ることができない苦悩が描かれる。疎遠になっている父親に思いきって電話するシーンがあるが、ドラマは2011年の作品なので、まだガラケーだ。
しかし、そこから聞こえてくる「自業自得や!」という父親の怒鳴り声や、子育てと仕事が両立できないもどかしさの一つ一つは、13年前のドラマであることを感じさせない。それはいまだに「子育ては主に母親が担うもの」という風潮があり、支援の難しさも変わっていないからだろう。
母親だから頑張ってあたりまえ。それができない自分は失格――。
心が折れそうになるユカに、友子が泣きそうな声で、「ユカさん、頑張ってるやん、偉いよ!」と言葉をかける。それを聞いてやっとユカが「助けてくれる?」と絞り出すように言うことができるシーンに、胸が締めつけられる。